TidBITS#1070 日本語版 4月1日号

TidBITS Japanese hosoka @ ca2.so-net.ne.jp
2011年 4月 1日 (金) 01:50:12 PDT


TidBITS#1070/01-Apr-2011
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     英語版: <http://tidbits.com/issue/1070>
     日本語版: <http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1070.html>


   ライター向けのツール、システムユーティリティ、来たるべき Mac OS X
   バージョン、非常に捕まえにくいセキュリティ脆弱性、それから The Daily
   の出版テクノロジーの舞台裏、何て盛り沢山な号なんだ! セキュリティ編
   集者の Rich Mogull は、iOS および Mac OS X 上の新たなセキュリティ脆
   弱性で、ほとんどすべての Apple製品に影響を及ぼすものについて警告を述
   べる。また Tonya Engst は来たるべき iPad 用 Microsoft Word リリース
   を説明しつつ、彼女の原点に立ち返る。Adam は Apple がいかにしてあの
   iTunes 購読サービスの噂をきっぱりと終息させようとしているのかを分析
   する。そして Jeff Carlson が Lioness を紹介する。Many Tricks 製のこ
   のユーティリティは、Mac OS X Lion に新設されるオートセーブのテクノロ
   ジーに統合しつつこれを拡張するように作られている。最後にもう一つ、
   Michael Cohen がレビューするのは Literature & Latte 製のユーティリ
   ティで、同社の人気のワードプロセッサ Scrivener を,切実に休息を必要
   としているライターのために拡張するものだ。

記事:
     雌ライオンが正気をオートセーブ
     Microsoft Word 5.1 が復活... iPad 上で
     The Daily の舞台裏
     iPhone と iPad にテキスト脆弱性が発見される
     Apple、購読サービスと購読ベースの Mac を提供
     そうしたくないと思った時には Bartleby


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雌ライオンが正気をオートセーブ
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     文: Jeff Carlson <jeffc @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/article/11999>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   来たるべき Mac OS X Lion に施される数多くの変更のうち、最も歓迎すべき
   ものの一つがオートセーブ機能、つまりあなたが作業中の書類をアプリケーショ
   ンが自動的に保存してくれる機能だ。これは、必ずしも新しい機能ではない。
   例えば iMovie のようなプログラムはずっと以前からこれをしてきている。け
   れども、システムレベルで書類の自動的な保存を提供するのは今回が初めてだ。
   私たちとしては、編集作業の結果がアプリケーションのクラッシュによって失
   われなくなることにより、何千時間分もの生産性が救われることと期待したい。

   しかしながら、この機能にはある問題が伴う。私たちのように、書類を保存す
   るために数分に一回 Command-S を押すことが身に付いてしまっている人たち
   はどうなるのだろうか? きっと私たちは、毎日何十回、いやひょっとしたら
   何百回とシステムビープ音を聞かされてひどくうんざりしてしまうのではない
   か? 幸いにも、この不都合に悩まされる人は私だけではない。以前 Macworld
   で、現在は Many Tricks で働いている Rob Griffiths が、Lioness のリリー
   スを発表してくれた。これは、反射的にしてしまう動作をより生産的かつ楽し
   めることに振り向けてくれるユーティリティだ。(彼らの謳い文句が傑作だ:
   「今どき手で保存するなんてガォーもの (roarity) さ。」)

<http://manytricks.com/lioness/>

   Lioness はキー組み合わせ Command-S を傍受して、それに対して何らかの動
   作をする。無料のデモ版では、四つのサウンドのうちから選んで聴くことがで
   きる。雌ライオンの吠え声、赤ちゃんの笑い声、"Do'h!" と驚く男の声、それ
   と穏やかな森のそよ風だ。また、Lioness がランダムにサウンドを選ぶよう設
   定することもできる。さらに、あなたが何回 Command-S 押したかを示すカウ
   ンターを表示した Growl 通知も現われる。

<http://tidbits.com/resources/2011-04/af_lioness_popup.png>

   現在のところ、Lioness は無料のデモモードのみの形で入手できる。数ヵ月後
   に Mac OS X Lion がリリースされた後になってから、Many Tricks ではこの
   ユーティリティの Paranoid モード(Griffiths によれば内輪では "Kissell
   Run" と呼ばれているという)をアプリ内購入の形で提供する予定だ。(価格
   は未定。)この Paranoid モードが有効になっていると、Command-S を押せば
   いくつかのことが起こる: まず、現在アクティブな書類のコピーが自動的に
   Finder であなたの Dropbox フォルダの中に作られる。そして、ファイルが無
   事コピーされたことと、どの程度の量のデータロスの危険が避けられたかとを
   表示した Growl 通知が出る。それから、再び最前面のアプリケーションにコ
   ントロールが返され、あなたは仕事を続けられるようになる。

   あなたが Dropbox アカウントを持っていない場合は、Paranoid モードが他の
   同様のバックアップツール、CrashPlan、Backblaze、Carbonite、iBackup、
   JungleDisk、MobileMe、Mozy、MyOtherDrive、または SugarSync を呼び出す
   よう設定することもできる。

   デモ版の Lioness が、現在 Many Tricks から無料のダウンロードで入手でき
   る。有料モードは Mac OS X Lion の出荷後間もなく利用できるようになる予
   定で、Mac App Store にも登場するはずだ。このソフトウェアを数時間ほど使っ
   てみた今、Lioness こそ私のデータの中に深々とその牙を食い込ませて決して
   放さないアプリだという気がしている。

<http://manytricks.com/download/lioness>


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   コメントリンク: <http://tidbits.com/article/11999#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/11999>


Microsoft Word 5.1 が復活... iPad 上で
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     文: Tonya Engst <tonya @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/article/12063>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   その昔、何人かの Microsoft 開発者たちが協力して作業プロジェクトを作り、
   Macintosh 版 Microsoft Word 5.1 の「カーボン化」を目指したことがある。
   Microsoft Word 5.1 が Mac OS X の下でもネイティブに走るように、という
   ことだ。(2003 年 4 月 1 日の記事“Microsoft Word 5.1 が Mac OS X 版で
   再登場”参照。)長年の Word ユーザーたちの多くは、Word 6 がリリースさ
   れて以後 Word がその栄光を取り戻したことは一度もなかったと感じていた。
   Word 6 は以前にもまして Windows 風に作られてしまったこと、Microsoft の
   IntelliSense テクノロジーの初期の実装が組み込まれてしまったことなどの
   問題点を抱えていた。(1999 年 8 月 15 日の記事 "The Word on Word 6" 参
   照。)Word 5.1 を Mac OS X にもたらそうとしてこのプロジェクトは、より
   新しい Mac でも Word 5.1 が使えるようにしようという意図の下に生まれた
   ものであった。

<http://tidbits.com/article/7139>
   (日本語)<http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-674.html#lnk3>
   "Microsoft Word 5.1 が Mac OS X 版で再登場"
<http://tidbits.com/article/1884>

   残念なことに、そのカーボン化プロジェクトはスパゲッティ様コードの絡まり
   に行き詰まり、製品リリースにまでは至らなかった。幸いにも、その失敗から
   多くを学ぶことで、プロジェクトは今また軌道に乗り、今回は Word 5 を iPad
   アプリとしてリリースすることを目指す運びとなった。

   どうやら、Microsoft は iPad 用のワードプロセッサを作る可能性を検討する
   うちに、iOS 4 のコードベース(と使える機能の範囲)が比較的コンパクトで
   ある点を考えれば、きちんと機能する製品を出荷するためには Word 5 を移植
   するのがベストの選択であると悟ったのであろう。そして、同社がいくつかの
   フォーカスグループに対して製品の説明をした際、iPad 用 Word 5.1 は実際
   に満場の喝采を受けた。(現時点では、Microsoft はより小さなスクリーンの
   iOS 機器に向けたバージョンを考慮していないが、顧客の要求さえあればきっ
   と考慮されるであろうという明確な返事を私は受けた。)

   私は自分の iPad でこのアプリのベータ版を走らせてみたが、100 ページを超
   える書類であっても安定して動き、便利に使えるという感じを受けた。その動
   作は Word 5.1 の熱狂的なファンが期待する通りのもので、ルーラをタップす
   ることもでき、キーボードショートカットをカスタマイズして Apple キーボー
   ドドックの一番上の行に並んだキーを使えるようにすることもできる。

   大きな機能で欠けているものが一つと、胸がワクワクするような変更点が一つ
   ある。欠けている機能としては、iOS ではアプリ同士のコミュニケーションが
   できないことにより、Publish and Subscribe 機能がなくなっている。けれど
   も、Microsoft の古色蒼然たる OLE (object linking and embedding) が、現
   代版として蘇った。その iPad の上で、_また_ ローカルな Wi-Fi ネットワー
   ク経由で、異なる Word 5 書類同士の間で OLE が働くようになる。これによ
   り、他の Office 書類から取ってきたコンテンツをあなたの Word 書類の中へ
   ワイヤレスで挿入できるようになる。もしもあなたの iPad をローカルネット
   ワークから切り離したければ、オープンソースの Gears (旧名 Google Gears)
   プロジェクトから拝借してきた一連のコードを使ってそれも実現できる。

   バージョン 1.0 リリースの iPad 用 Word 5.1 が、App Store での販売に向
   け Apple の認可を受けるべく最近提出された。販売開始となれば、小売価格
   は $41.99 となる。


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   コメントリンク: <http://tidbits.com/article/12063#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12063>


The Daily の舞台裏
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     文: Adam C. Engst <ace @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/article/12052>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   Rupert Murdoch による iPad 専用出版 The Daily ほど注目を集めたものは他
   にまずなかった。The Daily に対してはインターネットのいたる所から膨大な
   量の紹介記事や批判記事が出現し、TidBITS も例外ではなかった。(2011 年
   2 月 3 日の記事“なぜ The Daily はこんなに古臭いのか”参照。)

<http://tidbits.com/article/11940>
   (日本語)<http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1062.html#lnk6>
   "なぜ The Daily はこんなに古臭いのか"

   それでも、The Daily がスタートしてからほぼ二ヵ月経った今、あの 3 千万
   ドルの開発資金と毎週 50 万ドルとも言われる予算とがいったいどのように使
   われているのか、垣間見ることができるようになったのは素晴らしいことだ。
   これは、出版における透明性に対する The Daily のコミットメントのあらわ
   れと言えるだろう。このページは、最先端技術を駆使した The Daily ニュー
   ス編集室で毎日使用されているテクノロジーが見て取れるばかりでなく、毎日
   の新しいニュースコンテンツを作り出すために The Daily のスタッフたちが
   どのような手順を用いているかまで示されている。(ここのウェブページのレ
   イアウトがシンプルであることに惑わされてはいけない。彼らは、iPad 上の
   プレゼンテーションのためには、遥かに高度なものを再現しているのだから。
   そちらには写真のスライドショーやビデオインタビューなどもある。)

<http://tidbits.com/resources/2011-04/the-daily/dtr4.htm>

   一言で言えば、私は The Daily が達成したものに畏敬の念に似た気持ちを抱
   いている。現代的な出版がどんな風に為されているかに興味ある方には、ぜひ
   The Daily の物語を一読してみられるようお勧めする。


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   コメントリンク: <http://tidbits.com/article/12052#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12052>


iPhone と iPad にテキスト脆弱性が発見される
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     文: Rich Mogull <rich @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/article/12086>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   あるセキュリティ研究者が本日、新たな脆弱性に関する詳細情報を発表した。
   この脆弱性はほとんどすべての Apple 製品のユーザーに深刻な影響を及ぼす
   ものであるが、特に iPhone と iPad では深刻度が大きい。この欠陥はすべて
   のバージョンの iOS および Mac OS X でユーザーに影響を与えるものであり、
   最新の MacBook Air 各機種も例外ではない。この欠陥は Amazon Kindle をは
   じめ、他の多くの電子ブックリーダーにも同様に影響を与えるとみられる。た
   だし Apple TV は影響を受けない。

   この研究者、Applied Conceptual Defense の Carl Noevil によれば、文字で
   書かれた文章を表示することのできるあらゆる機器においてソーシャルエンジ
   ニアリング攻撃を受ける可能性が存在し、その製品のユーザーに深刻な影響を
   与える可能性があるとのことだ。いったんその機器が攻撃を受ければ、影響を
   受けた文章題材のコピーを通じて攻撃は自己増殖する。Applied Conceptual
   Defense では、今回新たに発見されたこの脆弱性に対する保護のためのさまざ
   まのフィルタリングテクノロジーを販売している。彼らのセキュリティ勧告書
   には次のように書かれている:

    「これは、私たちがこれまでに発見した中で最も深刻な脆弱性の一つです。
    この欠陥はほとんどあらゆる Apple 製品に影響を与えることから、私たち
    は既に Apple に対し警告を送っていますが、Apple は未だに何のパッチも
    提供しておらず、顧客に対する通知も行なっていません。そこで私たちはこ
    の発見を広く公開して、修正が出されるまでの間ユーザーが自らを保護する
    ことができるようにしたのです。私たちの現行製品のユーザーはフルに保護
    されています。」

   私たちが Noevil に対してさらなる情報を求めてみたところ、彼は次のような
   返事を送ってきた:

    「私たちは自分たちが発見したことの持つ可能性の多様さに、我が目を疑う
    思いでした。テストを試みたほとんどすべての機器とシステムを、完璧に攻
    撃することができました。私たちは主として Apple に集中して研究をして
    いますが、テキストを表示できるものならばどのような機器でもこの脆弱性
    の影響を受けることを証明することができました。さらに、クロスプラット
    フォームの攻撃を組み立てることも非常に簡単です。この脆弱性の深刻度を
    考えれば、Apple がその顧客をもっとよく保護していないことは衝撃的です。
    完全に無責任だと言えるでしょう。」

   悪意ある順序に文字を組み合わせることによって、攻撃者は不和を生じさせる
   考えやデマ、偽情報を広め、それを読む者の中に神経学的なバッファオーバー
   フローを生じさせたり、あるいはユーザーに対して現実の感情的な反応を引き
   起こしたりできる可能性がある。極端なケースでは、攻撃が認知的不協和によ
   る無力状態を作り出すこともあり得る。自動者を運転中にテキストを表示可能
   な機器が働いていた場合、この種の攻撃によって実際に肉体的な障害に結び付
   いたという実例もある。

   多くのセキュリティ脆弱性とは異なり、この種の攻撃は現実世界における大規
   模なダメージに結び付くことさえある。また、攻撃は現代のデジタルコミュニ
   ケーションメディアによっても、また物理的なメディアによっても伝達される。
   研究者たちはブログ記事で次のように述べている:

    「私たちはまだ歴史的な研究情報を収集中の段階だが、現時点で言えること
    は、この脆弱性が非常に古い昔から存在し続けてきたという点だ。この脆弱
    性の結果として非常に悪い意思決定がなされたり、感情的な苦悩が原因となっ
    て政治的な混乱が生まれたりした例は、歴史的にも枚挙にいとまがない。例
    えばアメリカ独立戦争もこの脆弱性の変種による結果であったし、私たちの
    調査によればロシア革命でさえその準備段階でこの脆弱性が一定の役割を果
    たしたかもしれない。また、Wikileaks も、それ自体この脆弱性を突くため
    にデザインされたボットであると思われる兆候があるが、この点については
    私たちもまだすべてのコードを逆コンパイルし終えたわけではない。」

   研究者たちによれば、彼らが Apple に対象を絞っているのは同社の人気の高
   さと同社の製品の急激な広がりによるのだという。将来は Amazon の Kindle、
   Barnes & Noble の Nook その他、たやすく報道記者たちの注目を集める各種
   のトレンディーな製品についても、さらなる研究を進めたいと計画している。
   電子的機器以外にも、この脆弱性は印刷された書籍や、雑誌、新聞、さらには
   広告看板などにさえ影響を与えることができる。

   Applied Conceptual Defense によれば、同社の販売する ViewBlock テキスト
   フィルタリングテクノロジーを用いているユーザーはこの脆弱性から影響を受
   けることがないという。また、私たちがオンラインでのコメントで目にしたと
   ころによれば、Joo Janta 200 Super-Chromatic Peril Sensitive Sunglasses
   (超色彩的危機対策サングラス) をかけている人も保護されるのだという。

   Apple にコメントを求めたが、反応は得られなかった。


   ----
   コメントリンク: <http://tidbits.com/article/12086#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12086>


Apple、購読サービスと購読ベースの Mac を提供
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     文: Adam C. Engst <ace @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/article/12084>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   去年、長年にわたり Apple を巡って流れていた噂のうち二つが、現実となっ
   た。Beatles の iTunes Store 登場と、Verizon 版の iPhone だ。これらの噂
   がこんなにも長い間生き残っていたという事実こそ、それらがどれほど道理に
   かなったことであったかの証明と言える。当然 Verizon 版の iPhone はある
   べきだし、当然 The Beatles は iTunes にあるべきだ、というわけだ。けれ
   ども、それらが実現されるまでには、Apple があらゆるライセンス上の問題と
   技術的な困難を乗り越える必要があった。

   来年の今頃までには、さらにもう一つの長らく続いた噂が現実のものとなるは
   ずだ。それが、iTunes 購読だ。iTunes Store がスタートして以来、Apple が
   アラカルト方式の販売の他に購読のオプションも提供するのではないかという
   臆測がずっと流れていた。その方向への小さな一歩は iTunes Store での映画
   とテレビ番組のレンタルという形で実現していたものの、それは本当のゴール
   へ向けての単なるウォーミングアップに過ぎなかった。すべてを網羅したフル
   の購読サービスは、Apple Plan という暫定的な名前で呼ばれる。

   簡単に言えば、この Apple Plan (仮称) はあなたの Mac または iOS 機器で
   あなたがするすべてのことを、月額料金でカバーする。そして、ここで「すべ
   て」と言ったのは、本当にすべてのことだ。Apple Plan には従量制の 4G モ
   バイルブロードバンドプランも含まれ、それを使って音楽や、映画、テレビ番
   組、オーディオブック、さらには印刷された書籍さえも、ストリームできる。
   基本的に、iTunes Store や iBookstore で入手可能なものはすべてこれに含
   まれる。でもそれだけではない。App Store や Mac App Store から好きなア
   プリをダウンロードして使うこともできる。(ただしこれは、そのアプリの開
   発者がそのアプリについて単純な購入の代わりにレンタルもできることを承認
   した場合に限られる。)

   この Apple Plan の料金は決して安いものではない。なぜなら、その中にあな
   たが現在持っている可能性のあるインターネットサービス (例えば月額 $50)、
   携帯電話データプランも一つ二つ (別途月額 $15 から $60)、Netflix (月額
   $10)、Pandora あるいは Rdio (月額 $3 から $10)、Audible (月額 $15 から
   $23)、Booksfree (月額 $14 から $50) なども含まれ得るからだ。ある情報筋
   によれば、Apple Plan の料金はまだ決定されていないけれども、おそらく月
   額 $200 から $250 程度になるのではないかという。また、Apple は Apple
   Plan の個々のユーザーが何を購読するか選べるようにするかもしれない。こ
   の点もまだ決まっていないが、もしそうなれば顧客が従量制 4G データプラン
   を既存のブロードバンドケーブルまたは DSL アクセスに切り替えて使うこと
   もできるようになるだろう。

   Apple Plan はそれ自体が非常に斬新なものだが、Apple はその点をさらにもっ
   と突き詰めようとしている。iPhone と iPad の成功から学んだこととも言え
   るだろう。ユーザーの観点からは、ひっきりなしにアップグレードのための料
   金を支払わなければならないのは非常に煩わしい。また、バックアップをした
   り、新しいコンピュータに移ったりするのはさらにもっと厄介なことだ。そし
   て、ビジネスの観点からは、Apple は多少のハードウェアの売り上げ利益を捨
   てても、継続的な購読料収益があれば御の字だろう。

   そこで、来年になれば新しい MacBook Air 風のマシンがデビューする(ひょっ
   としたら年末のホリデー商戦に間に合うように出るかもしれない)が、そのマ
   シンはハードウェアスペックとしては取り立てて珍しいものではない(ただし
   4G ワイヤレスチップセットが搭載されることは特記すべきかもしれない)が、
   これが他と違うのは $99 という価格だ。(未だに Windows XP の走る古い PC
   に依存している人たちもきっと目を丸くするだろう。)安価な携帯電話と同じ
   ことだ。ハードウェアの価格は安いかもしれないが、Apple Plan の二年間契
   約を購入することが必要となる。Apple は、そこで販売価格の違いを取り戻す
   わけだ。この点は間違いなくオンラインで膨大な議論を巻き起こすに違いない
   が、この Mac には Mac App Store 経由でなければソフトウェアをインストー
   ルすることができない。Apple としても、安い販売価格を正当化するためには
   あらゆるソフトウェア収益から一定の取り分を得なければならないのだ。

   それから、これもまた議論を巻き起こすに違いないのが、Apple Plan におけ
   る Apple の収益取り分だ。Apple はプラットフォーム全体と、Apple Plan の
   ために介在すべき iTunes アカウントとの両方をコントロールしているので、
   バンド幅の使用料金や、ハードウェアのコストをカバーするためのいくらかの
   基本額を差し引いた毎月の収入は、完全に使用時間によって計算することがで
   き、そこに Apple の従来通り 70 対 30 の分割が適用される。購読中の項目
   のうちどれがアクティブに使われているかは、バックグラウンドで走るプロセ
   スによって追跡がなされる。

   例えば、仮に Apple Plan の月額料金がバンド幅料金を差し引いて $250 であっ
   たとして、Apple がそのうち $100 をハードウェアの分として差し引いたとし
   よう。(当然ながら、もしもあなたが既存のマシンで使うために Apple Plan
   を購入すれば、ハードウェアの分を支払う必要はない。)残りの $150 のうち、
   Apple が 30 パーセントを取り、残りの 70 パーセントはその月間にあなたが
   それぞれのアプリを使い、本を読み、音楽を聴き、映画を観た、それぞれの時
   間数に応じて分配される。さらにこの計算に入ってくるのが個々の項目ごとの
   「定価」だ。つまり、あなたが $9.99 の本を読みながら一時間過ごせば、そ
   の本の出版者があなたの月額料金のうちから得る額は、あなたが $1.99 のテ
   レビ番組を観た場合の額よりも大きいものとなる。要するにあなたは、あなた
   が注意を向けていたものに対して、個々にそれに応じた料金を支払うのだ。た
   だし、バックグラウンドで再生されるメディアはその唯一の例外となる。

   最終的な価格決定がどれほど難しいか、もうお分かりだろう。Apple としては
   Apple Plan の価格をできる限り手頃なものに抑えたいのだが、映画会社、楽
   曲アーティスト、書籍の出版者、アプリの開発者などがすべてこの仕組みを受
   け入れてくれるだけの十分な金額を彼らにも保証しなければならない。とはい
   え、Apple は iTunes Store と iBookstore のすべてのコンテンツがスタート
   時点ですべて提供できるようにしたいと思っているし、App Store と Mac App
   Store についても大部分のコンテンツが対応するようにと願っている。けれど
   も顧客側の立場からは、もしもこの Apple Plan が十分たくさんの他のサービ
   スをその内に取り込むことができるのならば、それはすなわちあらゆるものが
   一つのサービスで済むというシンプルさが実現することを意味していて、音楽
   も、ビデオも、本も、アプリもすべて、項目ごと個別の価格なんか全く気にせ
   ずに,全部一つの請求書にまとめるられるという、非常に魅力的な状況となる
   ことだろう。

   最後に一つ付け加えると、はたして一つの会社が私たちの文化的生活全体をこ
   れほどに支配してよいのだろうかという問題は、間違いなく嵐のような論争を
   呼び起こすことだろう。つい最近 Google Books の和解案が却下されたことも
   (2011 年 3 月 24 日の記事“Google Books 和解案を判事が承認拒否”参照)
   文化批評家やコメンテーターたちの怒りを静める役には一切立たないだろう。
   けれども、もしも Apple の過去十年間の実績が何かを示唆するとすれば、きっ
   とこの Apple Plan も大ヒットとなり、この会社の優位性を引き続き保証する
   ものとなって行くのではないだろうか。

<http://tidbits.com/article/12070>
   (日本語)<http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1069.html#lnk2>
   "Google Books 和解案を判事が承認拒否"


   ----
   コメントリンク: <http://tidbits.com/article/12084#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12084>


そうしたくないと思った時には Bartleby
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     文: Michael E. Cohen <lymond @ mac.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/article/12051>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   作家が壁に行き当たる (writer's block) という言葉は、誰でも一度は聞いた
   ことがあるだろう。どんなライターでも一度は経験する、どうしても言葉が出
   てこないという、心が弱ったような状態のことだ。Gene Fowler が、この状態
   のことを巧みに形容している。いわく、「書くことは簡単だ。ただ、まっさら
   な紙をじっと眺めて、あなたの額に血の汗がしたたるまで待てばよいだけなの
   だから。」しかし、これとは正反対の、けれども本物の、大きな問題があるこ
   とを自覚している人は少ない。こちらもまた心が弱った状態の一つで、作家の
   活動過熱 (writer's overdrive) だ。

   でも、Take Control の編集長 Tonya Engst は、この問題にをあまりにもよく
   知り過ぎている。少なくとも彼女が担当した著者たちの一人は過活動状態を経
   験したことがあって、そのため彼女は彼の本の一つを制作している真っ最中に
   彼から別の本の原稿と、さらにその後に続く本の詳細な概要までも届く、とい
   う事態に直面させられた。彼女はこう叫んだものだ。「私には経営すべきビジ
   ネスもあるし、育てるべき子供もいるし、ランニングシューズを履かせ続ける
   べき夫もいます。この人一人の個人的召使いでいる時間はないのです。彼の書
   く本がどんなに優れたものであったとしても!」これこそが、活発過ぎるその
   物書きに、彼女が Literature & Latte の最新の執筆補助ツール Bartleby を
   喜んで買い与えた理由だった。

<http://literatureandlatte.com/>

   同社の旗艦ソフトウェア Scrivener は評判の良い多目的のコンテンツ生成ツー
   ルだが、この上に作られた Bartleby は、言ってみればコンテンツ生成調速機
   だ。Scrivener のアドオンとして働く Bartleby は、一瞬一瞬ライターの生産
   性を監視して、生産性が語漏症の段階に至り始めたとみられる場合は、助けに
   なる警告メッセージと気分転換とを提供してくれる。

<http://tidbits.com/resources/2011-03/bartleby_interocitor.png>

   Bartleby は、注意深く調整された "Interocitor Engine" と呼ばれるアルゴ
   リズムを複雑に組み合わせたものによって働く。この Interocitor は、書き
   込まれる速度と内容の品質の双方を評価する。品質の評価は、現在のセッショ
   ンでの仕事の内容と、その著者の過去の作品ならびに他のライターによる同種
   の内容を扱った定評ある作品を含めたデータベースとの比較によっている。評
   価の結果のマトリクスがこのプログラムの呼ぶところの「危険ゾーン」に入り
   込めば、Bartleby は即座に先制的行動に移る。それは、そのライターの過去
   の挙動パターンを学習した結果に依存するのだが、そのライターに速度を緩め
   るよう具体的な警告の文章を出すこともあるし、あるいはもっと巧妙かつクリ
   エイティブな気分転換措置となることもある。

<http://tidbits.com/resources/2011-03/interocitor_in_action.png>

   私はこの記事を書きながら Bartleby を使ってみたが、このソフトウェアは宣
   伝文句通り、私が記事の冒頭の部分の書き出しに苦闘していた間は出しゃばら
   ずにおとなしく控えていたけれども、私の頭の中でクリエイティブな爆発が起
   こって言葉が私のタイプできる速度よりも速く湧き出してきたとたんに、突如
   素早く働き出した。最初のうち Bartleby はいくつか丁重な注意の言葉を並べ
   て私に速度を緩めるよう言ってきたが、私がそれを無視し続けていたところ、
   Bartleby はいきなり邪魔を...!! そうそう、ちょっと待って、Bartleby がたっ
   た今、イルカに乗ったネコが歌を歌う、素敵なウェブページを見つけてくれた
   ところだ! すぐ戻るから (BRB)!

<http://www.kanegs.com/flash/games/cat_on_dolphin>


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[訳注: お楽しみいただけましたか? 念のため申し添えますが、この号、
TidBITS#1070/01-Apr-2011 の _すべての_ 記事は、あくまでもエイプリルフール
の日のみ、4 月 1 日の、一日限りの内容となっておりますので、あしからず!]



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