TidBITS#1110 日本語版

TidBITS Japanese hosoka @ ca2.so-net.ne.jp
2012年 1月 27日 (金) 17:25:22 PST


TidBITS#1110/23-Jan-2012
========================
     英語版: <http://tidbits.com/issue/1110>
     日本語版: <http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1110.html>


   先週の Apple のスペシャルイベントは教育市場を対象としたものであったか
   もしれないが、今週号の TidBITS には新しい iBooks 2、iBooks Author、そ
   れに iTunes U アプリと、それらが本を作る側と読む側の人々それぞれにとっ
   てどのようなものであるかを巡る話題が満載だ。Adam が Apple の発表の要点
   を伝えるとともに、人々が困惑していることの大部分は Apple が教育市場の
   すべてを狙っているという点を見逃しているからだと論ずる。Michael Cohen
   も、iBooks Author が教育に大きな意味を持つだろうという論説を寄稿する。
   それと正反対の意見を述べるのが物理教師の Steve McCabe で、彼は iBooks
   の教科書は二十年も前の考え方を焼き直したものに過ぎないと論ずる。さて、
   私たちが出版したものに目を移せば、拡張された iBooks 教科書ではないかも
   しれないが、Glenn Fleishman の新刊書 "Take Control of Screen Sharing
   in Lion" にはあなたの必要に応じてスクリーン共有の方法を選んで実行する
   ために必要な助言が揃っている。Glenn はまた、AT&T が最近変更を加えた
   iPhone と iPad 用のデータプランについても紹介する。今週注目すべきソフ
   トウェアリリースは、iTunes 10.5.3、Typinator 5、QuarkXPress 9.2 と
   Default Folder X 4.4.8 だ。

記事:
     Moscone で直接の TidBITS 会員サインアップは中止
     AT&T、新顧客に対してデータプラン料金を値上げ
     新しい Take Control 本がスクリーン共有の魔法を暴く
     Apple、学校に戻る: iBooks 2、iBooks Author と iTunes U
     なぜ iBooks Author は大きな意味を持つか
     iBooks 教科書: 必ずしも教育の革新とは言えない
     iBooks Author を出版者の観点から分析する
     TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2012 年 1 月 23 日
     ExtraBITS、2012 年 1 月 23 日


----------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: ------------------

* 読者のみなさん! 今すぐ会員になって TidBITS を応援してみませんか?
    特典はこちら: <http://tidbits.com/member_benefits.html>
    今週は Denis Jarvis 氏、Paul Atroshenko 氏、
    John Montag 氏と Michael Lau 氏の暖かい支援に感謝!

* SYNC YOUR PHONE with The Missing Sync: Sync your calendar,
   address book, music, photos and much more between your phone
   and Mac. Supports ANDROID, BLACKBERRY, PALM PRE and many
   other phones. <http://www.markspace.com/bits>

* Dragon speech recognition software for Macintosh, iPhone, and iPad!
   Get the all-new Dragon Dictate for Mac from Nuance Communications
   and experience Simply Smarter Speech Recognition.
   Learn more about Dragon Dictate: <http://nuance.com/dragon/mac>

* CrashPlan is easy, secure backup that works everywhere. Back up
   to your own drives, computers, and online with unlimited storage.
   With unlimited online backup, this is one resolution you can keep.
   Back Up Your Life Today! <http://crashplan.com/ref/tidbits.html>

* Get more productive with software from Smile: PDFpen for
   editing PDFs; TextExpander for saving time and keystrokes while you
   type; DiscLabel for designing CD/DVD labels and inserts. Free demos,
   fast and friendly customer support. <http://www.smilesoftware.com/>

* Intego: Internet Security Barrier is a full-featured security
   suite that protects Macs from malware, network threats, data
   loss, spam and much more. Fully compatible with Mac OS X Lion.
   Download a free trial. <http://www.intego.com/isbtx>

* Noteboom Video Tutorials for Apple Software: "When I started
   these tutorials, everything made sense! I totally agree with all
   the other 5 star reviews. Well worth the money! -GV" iMovie,
   Lion, iPhoto, and more! <http://www.noteboomproductions.com/tb>

---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----


Moscone で直接の TidBITS 会員サインアップは中止
-----------------------------------------------
     文: Adam C. Engst <ace @ tidbits.com>
     原文記事: http://tidbits.com/e/12745<>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   先週、私は記事“Macworld | iWorld 2012 での TidBITS イベント”(2012 年
   1 月 17 日) で、この金曜日の 3:00 PM に Moscone West で直接面と向かっ
   ての TidBITS 会員サインアップをする、と述べた。これは実はぎりぎりになっ
   てから決めたことであったが、私は考えが足りなかった。IDG World Expo に
   いる友人たちから、そういうことはしないようにという依頼が届いたのだ。そ
   の理由は、ショウの会場で商取引を行なうためにはブースの使用料を払うこと
   になっているのに、私たちはそれを払っていないからだ。私たちも、至極もっ
   ともなことだと納得した。そういうわけで、私たちはその時間にロビーのエス
   カレータの近くにいるのでそこで皆さんとお喋りしたいけれども、Moscone の
   館内で面と向かって会員受付けをするのは止めた。

<http://tidbits.com/article/12703>
   (日本語)<http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1109.html#lnk0>
   "Macworld | iWorld 2012 での TidBITS イベント"

   Moscone の外のどこかで直接会ってサインアップしたいとおっしゃるならばそ
   れは問題ないけれども、今年はどこか落ち合う場所を決めてそれをすることは
   しない。(Square を使ってみるのはとても楽しいだろうけれども、皆さんが
   オンラインでサインアップして下さる方が、実際お互いにとって簡単だ。私た
   ちは今も 1 月中に会員数 2,000 という目標を目指しているので、どうかよろ
   しくお願いします。)今回の変更で混乱が生じてしまったとすれば申し訳なく
   思います。IDG World Expo の方々にもお詫びします。

<http://tidbits.com/member_benefits.html>


   ----
   コメントリンク: <http://tidbits.com/e/12745#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12745>


AT&T、新顧客に対してデータプラン料金を値上げ
--------------------------------------------
     文: Glenn Fleishman <glenn @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/e/12727>
     訳: 亀岡孝仁 <takkameoka @ kif.biglobe.ne.jp

   AT&T は、スマートフォンデータプラン二つを $5 ずつ値上げしようとしているが、
   同時に月毎の使用割当を 50% 増やしている。iPad サービスプランもまた変更さ
   れているがより入り組んでいる。21 January 2012 迄は、この階層化されたスマー
   トフォンプランは、上り下りの使われたデータ量が 200 MB 迄に対して毎月 $15
   か、或いは 2 GB 迄に対して月当たり $25 である。超過したデータに対しては、
   $15 プランでは 200 MB 当たり $15 で、$25 プランでは 1 GB  当たり $10 がか
   かる。

<http://www.marketwatch.com/story/att-launches-new-data-plans-2012-01-18>

   22 January 2012 に、下の階層は月当たり $20 に上がるがこれには 300 MB のデー
   タが含まれる。追加の単位は 300 MB 当り $20 となる。次の階層は 3 GB のデー
   タに対して月当たり $30 に跳躍するが、超過料金は前のプランのギガバイト当た
   り $10 を継承する。そして最後に、AT&T は引き続きテザリングと個人ホットス
   ポットオプションに対して別料金を課す:個別プランとして 5 GB 当たり $50 で
   ある。超過料金はテザリングでは 1 GB 単位で $10 となる。

<http://www.att.com/dataplans>

   あなたの現在のプランに - 無制限、200 MB, 或いは 2 GB の何れか - 無期限で
   残ることは可能であるが、新しいオプションの何れかに切り替えた瞬間に、無制
   限サービスや前の階層に戻ることは出来なくなる。

   AT&T は月半ばでも手数料なしであなたのサービスプランを変更出来る極めて嬉し
   いオプションを提供しているが、これは myAT&T アプリ、その Web サイト経由、
   或いはカストマーサービスに電話をすることでもできる。通常はデータプランを
   月の最初の日にまで遡ることが出来、200 MB や 300 MB プランでもうかなりデー
   タを使ってしまっているのであれば結構な節約となるし、また月末にかけてデー
   タ使用量がずっと少なくなるか或いはずっと多くなると思われる場合は、支払い
   請求サイクルのその日から日割り計算して貰うことも出来る。(場合によっては、
   アプリ経由でサービス変更をするのではなく電話をしたり或いは Web サイトを使
   う必要があるかもしれない。)

   AT&T は、あなたの側では特段何もすることなしであなたのサービスレベルを毎月
   最善の料金に対応させることも可能である。こうすれば顧客満足度を上げること
   も可能で、結果としてチャーン (逃げていく顧客の数) を減らし、そして営業費、
   顧客保持費、アカウントコストを節約出来るであろう。しかしながら、AT&T は明
   らかに、他の大手キャリアの様に、そんなことには興味を持たないらしい - 思う
   に、これらの会社は収入を増やすためには少々の顧客迷惑はしょうがないという
   話なのであろう。

   その間、AT&T は、月 $30 を払い無制限プランに残る顧客の間で帯域使用トップ
   5% のユーザーに対しては EDGE 速度 (約 200-300 Kbps) に絞り込む対策を保持
   している。これまでに AT&T が発表してきた数字によれば、2011年半ばで無制限
   プランに残っている人は 20 百万人いる。この帯域制限の影響を受けている人は
   毎月 1 百万人に昇る。Twitter 上で、この制限を受けた一人のユーザーは先月の
   使用量は 2 GB をほんのちょっと超えただけなのに、帯域制限の対象にされたと
   言っていた。

   この新しい 3 GB の階層は無制限データと同じ料金であり、帯域制限を受けた無
   制限プランの顧客を計測プランに取り込もうとする AT&T の策なのかもしれない。

   タブレット側では、新しい iPad プランが出された。最も低いレベル - 250 MB
   で $14.99 - はそのままであるが、 2 GB で $25 のプランは $30 で 3 GB そし
   て $50 で 5 GB の二つのプランに置き換えられた。2 GB のプランは、現在それ
   を利用していて自動更新している人だけがそのまま使える。

<http://www.att.com/shop/wireless/devices/ipad.jsp>

   iPad 加入者で、毎月サービスに先立って請求されて後払いしてきた人は、超過分
   に対しては GB 当り $10 を翌月請求で支払うことが出来る。全料金は固定額で前
   払いする前払いサービスの人は、30日サイクルが満了する前に割当量を使い切っ
   た時に新しい 250 MB, 3 GB, 或いは 5 GB のプランを開始出来る。


     ----
   コメントリンク: <http://tidbits.com/e/12727#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12727>


新しい Take Control 本がスクリーン共有の魔法を暴く
--------------------------------------------------
     文: Michael E. Cohen <mcohen @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/e/12730>
     訳: 亀岡孝仁 <takkameoka @ kif.biglobe.ne.jp

   スクリーンを共有するのは面白い:一台の Mac のスクリーンを他の Mac から見
   るだけでも魔法の様に感じるが、自分の Mac から他の Mac をコントロールする
   のは尚更である。"Take Control of Screen Sharing in Lion" では、Glenn
   Fleishman があなたの Mac の帽子からウサギを取りだす多くの方法について説明
   している。この 103 頁の電子本は今日から $10 で手に入る。

<http://tid.bl.it/screen-sharing-lion-tidbits>

   あまり経験のない友人に見せびらかすのも一興だが、スクリーン共有は次の様な
   場面では不可欠のツールである:遠隔テックサポート ("それでダイアログには何
   て書いてある?" と繰り返し聞く必要はもうない)、遠隔サーバーを設定し管理す
   る、或いは実時間で一つの書類を合作する、必要に応じてカーソルの操作を交代
   しながら。これが何故 Apple がスクリーンを共有する色々な方法を提供して来た
   のかの理由なのである、その中には iChat, Back to My Mac, そして Screen
   Sharing アプリケーションが含まれる。しかしこれは何も Apple だけに限らない
   :Skype もまた Mac スクリーン共有を提供しているし、幾つかの iOS アップス
   からも出来る (そうです、あなたの Mac をあなたの iPad、いや iPhone からす
   らも動かすことが _出来る_!)。

   Glenn は、色々な状況に最適なスクリーン共有技術を選択する手助けをする。そ
   れぞれの方法が呈する長所と短所、そしてどの様なセキュリティになっているか
   を説明している。更に、より古い Mac で 10.5 Leopard や 10.6 Snow Leopard
   を走らせているものとスクリーン共有する方法、そして iOS 機器から Mac を管
   理する方法も取りあげている。

   この電子本が取り上げている色々なやり方には以下が含まれる:

* あなたの Mac を iPhone からコントロール出来る様に設定する。
* Mac で困っている叔父さんをスクリーン共有を使って助ける。
* あなたの Mac 上で内蔵の Screen Sharing アプリケーションを探しそして立ち
   上げる。
* 人手の届かない Mac をインターネット越しにコントロールする。
* MobileMe 或いは iCloud で Back to My Mac をオンにする。
* Skype 経由であなたのスクリーンを共有するための設定をし使い始める。 
* iChat Theater 経由で遠隔の地にプレゼンテーションを届ける。
* スクリーン共有でコントロールするため、遠隔の Mac を目覚めさせる。
* スクリーンを共有しながらテキストを一つのコンピュータから別のにコピーす
   る。
* Lion で自身のフルスクリーンディスプレイに共有スクリーンを載せる。
* 遠隔地にある Mac を、別のユーザーが別のアカウントでログインしている時に
   スクリーン共有経由でコントロールする。

   我々の拡大する職業的そして社会的ネットワーク内での Mac の数が増えるにつれ、
   これらに異なる場所から簡単にそして効率的にアクセスしたいという必要性も増
   加している。Glenn Fleishman の "Take Control of Screen Sharing in Lion"
   で、あなたもスクリーン共有の魔法を使いこなせるようになる。


     ----
   コメントリンク: <http://tidbits.com/e/12730#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12730>


Apple、学校に戻る: iBooks 2、iBooks Author と iTunes U
-------------------------------------------------------
     文: Adam C. Engst <ace @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/e/12731>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   ニューヨーク市で開催したスペシャルイベントにおいて、Apple の Worldwide
   Marketing 担当上席副社長 Phil Schiller と Productivity Software 担当副
   社長 Roger Rosner は、教科書市場の再創造を狙いとした二つの無料アプリ、
   iBooks 2 と、Mac 用の iBooks Author をお披露目した。その後さらに続けて、
   Internet Software and Services 担当上席副社長 Eddy Cue と iTunes 担当
   副社長 Jeff Robbin が、iOS 用の無料アプリ iTunes U を発表した。

<http://www.apple.com/apple-events/education-january-2012/>


**iBooks 2** -- iBooks 2 は、電子ブックの読書用に Apple が iPad 用に出し
   ている無料アプリへのアップデートで、これを使えば特別に作られた拡張電子
   ブックが読める。この拡張電子ブックには豊かなマルチメディア要素とインタ
   ラクティブなオブジェクトが豪華なレイアウトで含まれる。Apple は iBooks
   のこれらの新機能を教科書の世界に持ち込むことを主眼としており、ビデオや、
   インタラクティブな画像、3-D グラフィックス、復習問題の埋め込みなどを通
   じて学びの体験を大きく拡張することを狙っている。

<http://itunes.apple.com/us/app/ibooks/id364709193>

   そうした機能を使えば、例えば染色体の画像をズームさせて細かいところがはっ
   きり見えるようにしたり、あるいは分子の 3-D モデルを回転させて見たりす
   ることができる。また、インタラクティブなグラフィックスを利用して昆虫の
   体の部分をタップし、スクリーン上の別の場所に別の写真として拡大して見せ
   たりすることもできる。スクリーンの向きを変えれば表示が(縦置きの場合)
   スクロール方式と(横置きの場合)ページを使ったデザインとの間で切り替わ
   る。複数のカラムやテキスト内のグラフィックスなども使える。

<http://tidbits.com/resources/2012-01/iBooks2-multimedia.png>

   Apple がデモしてみせた iBooks 教科書には、用語集(グロッサリ)が内蔵さ
   れていて、それをブラウズして眺めたり、あるいは本文の中で太文字の単語を
   タップして用語集の中でその定義を調べたり(定義には画像を含めることもで
   きる)辞書で調べたりもできる。もちろん検索機能もあって以前より改良され
   ている。単語をタップすれば、その教科書の中で、テキスト中のものもメディ
   ア内のものも(おそらく検索インデックスを介しているのであろう)検索でき
   るし、また Wikipedia やウェブに検索を広げることもできる。その単語がそ
   の教科書の用語集に含まれている場合は、用語集のその項目も検索結果に含ま
   れる。

<http://tidbits.com/resources/2012-01/iBooks2-glossary.png>

   Apple が解決したと見える難問がもう一つある。ページ分けの問題だ。教室の
   中では、全員が文字通り同じページを見ていることが重要となる。そこで、横
   置きにした場合には固定ページ分けが使われるようになった。横置きの状態で
   はフォントやフォントサイズを変更することができない。ただし、縦置きモー
   ドに切り替えれば iBooks 標準のコントロールが再び登場して自由に設定を変
   更できるようになる。

   さらに興味深いのが iBooks 2 で新設されたノート取りおよび復習の機能だ。
   これは iBooks 教科書のみで機能する。従来の iBooks と同様に、タップして
   ホールドするかスワイプしてテキストをハイライト表示させることができる。
   そして iBooks 教科書では、学習カードのフォーマットでノート取りができる。
   ハイライトしたテキストが仮想の索引カードの「表側」に表示され、「裏側」
   に自分のノートを書き込む。タップすれば、表裏が入れ替わる。積み重なった
   カードは、シャッフルしてテスト勉強の助けにすることもできる。

<http://tidbits.com/resources/2012-01/iBooks2-notes.png>

   iBooks 2 は引き続きすべての iOS デバイスで走るユニバーサルアプリではあ
   るが、iPhone および iPod touch 版はこれらの新しい iBooks 教科書を表示
   することができない。(登場すらしないが、サイズが巨大なので、それは良い
   ことだ。)その上、私の持っている初代の iPad 上で教科書 "Life on Earth"
   を iBooks 2 で読もうと何度か試みたが、私が得られたのはグレイの画面上に
   導入部分のオーディオが流れるところまでだった。それから iPad をシステム
   終了して再起動して、やっと iBooks 2 は正しく本を表示することができた。
   ("Life on Earth" は現在無料で入手できる。ダウンロードサイズは 1 GB 近
   くある。)

<http://itunes.apple.com/us/book/id490270998>


**iBooks Author** -- 従来、iBooks で表示できるものには比較的限界があった
   し、そもそも EPUB にオーディオやビデオを追加するのはお世辞にも簡単とは
   言えなかった。この iBooks 教科書の作成のために登場するのが第二のアプリ、
   iBooks Author だ。これは Mac 用のアプリケーションで、Mac App Store か
   ら無料で、136 MB のダウンロードで入手でき、Mac OS X 10.7 Lion のみと互
   換だ。(実際には iBooks Author は 10.6 Snow Leopard で走らせることも可
   能だが、そのためにはちょっと厄介な手間がかかる。Digital Tweaker に詳し
   い説明がある。)

<http://itunes.apple.com/us/app/ibooks-author/id490152466>
<http://www.digitaltweaker.com/mac/mac-tips/2012/01/how-to-install-ibooks-author-on-os-x-snow-leopard/>

   予想される通り、iBooks Author は Apple の iWork アプリケーションによく
   似ていて、作業のスタートに使うための数多くのテンプレートが提供される。
   Keynote と同様に、本にページを追加して、それぞれのページにテキストやグ
   ラフィックス、マルチメディア要素を置いて行く。Pages や Word からテキス
   トを読み込むこともできるし、また iBooks Author は見出しやセクションな
   どの項目を作るための一連の書式を認識する。さらには Keynote プレゼンテー
   ションを読み込んでインタラクティブ要素とすることさえできる。

<http://tidbits.com/resources/2012-01/iBooks-Author.png>

   Pages と同様、iBooks Author もあなたが原稿の中で使った書式に基づいて自
   動的に目次を生成することができる。また、Glossary ツールバーを使って、
   あるいは用語の Control-クリックでコンテクストメニューを使って、用語集
   の項目を生成することができる。項目ができれば Glossary インターフェイス
   に移ってその用語の定義を入力する。

   残念なことに、iBooks Author には変更追跡機能とコメント用のツールがない
   らしいが、これらはいずれもプロフェッショナルな出版のためには必要だ。そ
   の結果として、iBooks Author に流し込むテキストは事実上編集を終えた最終
   的な形のものでなければならない。また、レイアウトや、オブジェクトの配置
   などに関する共同作業はすべて手作業でしなければならない。

   iBooks Author は三種類のタイプのファイルに書き出しができる: テキスト、
   PDF、それに iBooks フォーマットだ。テキスト書き出しは、おそらく既存の
   ファイルからテキストのみを抽出するために使うものだろう。PDF 書き出しも、
   特定のレベルでの校正用にしか使えないようだ。iBooks フォーマットという
   のは、どうやら EPUB にほんの少し手を加えたもののようで、MIME タイプが
   異なっている。(内部を見たければファイルを BBEdit にドロップしてやれば
   よい。)iPad を接続してそこへ直接書き出せばテストができる。入り組んだ
   通常の手順で電子ブックを iPad へ同期するよりも、この直接書き出しの方が
   ずっと簡単だ。

   しかしながら、一般的な EPUB の制作に iBooks Author が使えるのではない
   かと高望みしてはならない。ライセンス条項には、iBooks Author によって作
   成したファイルはすべて、無料で配布するか、または iBookstore のみを通じ
   て販売するか、いずれかでなければならないと明記されている。それに、iPad
   上の iBooks 以外でファイルを表示させるためには何らかのハッキングが必要
   になる可能性が高いように思われる。要するに、もしも私たち TidBITS が拡
   張された Take Control 電子ブックを iBooks Author を使って作成したいと
   思えば、読者がそれを入手する方法は iBookstore 経由に限られることになり、
   私たちとしては読者とコミュニケーションをすることも、現在私たちが提供し
   ているような形で本以外の機能提供をすることも、極めて困難になってしまう。
   さらに、Mac 上や Kindle 上で直接読めるように私たちが他のフォーマットで
   同じ内容の電子ブックを提供することも、より困難になる。私たちが今後
   iBooks Author を試してみないとは言わないが、今すぐ私たちの出版モデルを
   大きく変えるものとはならないだろう。


**iTunes U** -- Apple の第三のアプリ iTunes U は、iOS 5 を要し、iPad 上
   のみならず iPhone や iPod touch 上でも利用できるが、これは iBooks 2 が
   教科書ですることを、オンラインの授業コンテンツでしようとする。Apple は
   ずっと以前から、数多くの大学その他での講座を iTunes U 経由のオーディオ
   やビデオで提供してきたし、これまでのダウンロード総数が 7 億件を超える
   ことから見ても、成功を収めてきたと言える。今回の iTunes U アプリは、既
   存の講座のシンプルなオーディオやビデオももちろん再生できるが、それに加
   えて新たに拡張された講座を再生した場合にははるかに興味深いことになる。
   (と同時に多少不安定にもなるようだ。iBooks 2 と同様、私は iTunes U で
   もクラッシュを何度も経験した。Apple がバグを修正するに伴って、いずれの
   アプリも今後マイナーなアップデートが出ることを期待したい。)サンプルを
   試してみたければ、Duke 大学の Core Concepts in Chemistry がお薦めだ。

<http://itunes.apple.com/us/app/itunes-u/id490217893?m>
<http://itunes.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewCourse?id=495047302&s=143441>

   この iTunes U アプリは、一つの拡張講座を四つのセクションに分割する:
   Info (情報)、Posts (ポスト)、Notes (ノート)、それに Materials (資料)
   だ。スクリーン右縁 (iPad) かスクリーンの一番下 (iPhone/iPod touch) に
   あるタブを使ってセクションの間を切り替える。Info タブにはサブセクショ
   ンが提供され、講座の趣旨、講師の経歴、講座の概要などが分かる。

<http://tidbits.com/resources/2012-01/iTunesU-iPhone-Info.png>

   講座の核心は Posts タブにある。ここにはテキスト、オーディオ、ビデオに
   よる講義や課題などが集められ、iBooks Author で作成した新しい iBooks 教
   科書もここに含められる。(ただし、上で触れた通り、この教科書は iPad で
   しか読めない。)私が試してみた講座 Core Concepts in Chemistry は十分に
   肉付けされたもののようだったが、まだ進行中の講座については、新しい内容
   が追加される度に通知機能によってそれが知らされる。オーディオやビデオの
   講義をバックグラウンドで再生させ続けながら、インターフェイスの別の部分、
   例えば Notes タブなどを使うこともできる。課題を仕上げれば、チェック済
   みの印を付けることもできる。

<http://tidbits.com/resources/2012-01/iTunesU-iPad-Posts.png>

   Notes タブでは、普通の講義と同じようなノートを作ることができる。その講
   座の一部分である iBooks に含まれるノートもちゃんとそこに登場する。(た
   だしノートを取れるのが EPUB ベースの電子ブックのみであることは忘れては
   ならない。iBooks は PDF を表示でき、多くの講義が PDF を含めているけれ
   ども、PDF にノートを添付させることはできない。)このような電子ブックを
   課題の中に含めることもでき、そうしたものはすべて Materials タブの中に
   もまとめて表示される。講座の中には主要な資料がすべて含まれる(あるいは
   ダウンロードされる)が、電子ブックやアプリなど、補助的な資料の中には別
   途購入しなければならないものもあり得る。

<http://tidbits.com/resources/2012-01/iTunesU-iPad-Notes.png>

   iTunes U の講座をどうやって作成するかは発表されなかった。ただ、Apple
   によれば、これまでに六校が新しいツールにアクセスして、100 以上の新しい
   オンライン講座を作成したという。私たちとしては Apple が iTunes U 講座
   を作成するために必要なツールを(iBooks Author と同様に)公開して欲しい
   ものだと思う。そうなれば私たちもトレーニング講座を作成して iTunes 経由
   で販売することもできるようになるだろう。ただし、一店舗専売を巡る議論は
   やはり起きるだろうが。

   皮肉なことに、このようにしてオンラインに情報が出されることにより、大学
   での授業の出席率はますます減るかもしれない。iTunes U で講義をした大学
   教授の何人かから、録画された授業がいつも存在することに対する不満の言葉
   を聞いたことがある。

   より大胆な質問を提示すれば、大多数の講義をこのような形でオンライン受講
   することができるようになると、一般的に言って高等教育そのものに何が起こ
   るだろうか、という疑問が考えられる。特に、共同作業による授業や特別の機
   材が必要とならないようなタイプの科目について、問題は深刻かもしれない。
   はたして、成熟、人脈、機会を掴むこと、といった大学教育のさまざまの無形
   の価値は、そして最後に手にすることになる卒業証書は、高騰し続ける授業料
   のコストに見合うだけのものと言えるだろうか?


**教育現場で、一日に一個 Apple を** -- 私は Apple にこの言葉を向けたい:
   Apple は、ものを小さく考えない。これらのアプリは、電子的な書籍やオンラ
   インの講座に新たな基準を設けた。その上これらのアプリはすべて無料で提供
   される。問題は、Apple がすべてを自分のものにしたいと思っていることで、
   その過程で何が可能で何が不可能かを自ら発言しようとしていることだ。これ
   は、例えば Amazon でも似たようなことが言える。Amazon は、EPUB 対応を拒
   否することで作品を Kindle エコシステムの内部に囲い込もうとしているのだ。
   ただ、少なくとも Kindle フォーマットは野心的な度合がずっと低く、簡単に
   他のフォーマットに変換することが可能だ。

   既に Twitter においては、iBooks Author で作った作品を iBookstore 以外
   で販売できないことを巡る激論が盛り上がっている。私たちのような出版者た
   ちも既に、このような一店舗専売の iBooks 教科書を制作するための余分の労
   力と出費が正当化できるものかどうかと考えを巡らせつつある。さらに、発表
   によれば Apple はこれらの教科書を $14.99 程度の安価に抑える方針のよう
   だ。これは、何年も使い回しされることを前提に高価格の教科書に依存し続け
   てきた既存の出版社のビジネスモデルにとっては大打撃となるかもしれない。
   出版業界にとってどのような結果になるかは、これから注目すべきだろう。

   もう一つ、別の観点からも見ておく必要がある。それは、学校だ。学生たちに
   iPad を調達し、これらの iBooks 教科書を購入するための予算を、いったい
   どうやって学校は用意するのか? それは必ずしも不可能ではない。うちの近
   所の学区でも、タブレット機(この場合は Android だが)を利用した試験的
   プログラムで大成功を収めたところがある。学生の成績にも、経費の削減にも、
   ともに良い結果が出た。けれども、州または地区により認定を受けた教科書し
   か購入できないという学校は多い。まさにそこのところで、Apple と出版業者
   との繋がりが重要な鍵となるかもしれない。既に認可を受けた伝統的な教科書
   を単純に電子版に直した電子教科書であれば、政府機関としてもずっと簡単に
   認可を与えることができるはずだろう。


   ----
   コメントリンク: <http://tidbits.com/e/12731#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12731>


なぜ iBooks Author は大きな意味を持つか
---------------------------------------
     文: Michael E. Cohen <mcohen @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/e/12739>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   先週、Apple が教育に関係した発表をするやいなや(2012 年 1 月 19 日の記
   事“Apple、学校に戻る: iBooks 2、iBooks Author と iTunes U”参照)た
   ちまちウェブ上には耳をつんざくような解釈や批判の声が飛び交った。人によっ
   ては、Apple の iBooks Author プログラムに付属するエンドユーザー向け使
   用許諾契約 (EULA) はそれだけで致命的であって使い物にならないと主張し、
   以前から多くの人々が恐れていた通りの Apple が嘘つきで邪悪であるという
   理論に裏付けの証拠を与えるものになっていると言う者もいた。また、マルチ
   タッチを用いたこの新しい iBooks のブックファイルフォーマットが電子ブッ
   ク標準への直接攻撃であり Apple がこれまで語ってきたオープン標準に対す
   る献身への裏切りだと主張する人たちもいた。また別の人たちは、ここには私
   たちスタッフの一人である Glenn Fleishman も含まれるが、Apple のマーケ
   ティングメッセージそのものに不満と失望を感じたと述べた。

<http://tidbits.com/article/12731>
   (日本語)<http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1110.html#lnk3>
   "Apple、学校に戻る: iBooks 2、iBooks Author と iTunes U"
<http://venomousporridge.com/post/16126436616/ibooks-author-eula-audacity>
<http://www.glazman.org/weblog/dotclear/index.php?post/2012/01/20/iBooks-Author-a-nice-tool-but>
<http://www.macworld.com/article/164921/2012/01/apples_textbook_plan_feels_like_a_blast_from_the_past.html>

   Apple や iBooks Author に対する批判の多くがちゃんとしたものであるとは
   思うが、私はそういうことは気にしない。その理由を以下に述べよう。

   まず第一に、エンドユーザー向け使用許諾契約 (EULA) は、iBooks Author 自
   体と同じく、現時点ではまだバージョン 1.0 であって、いずれ変わるだろう
   と思う。Apple は以前にも EULA を変更したことがある。重要な例を一つ挙げ
   れば、iOS でアプリ作成のためにどの開発ツールが使えるかに関する制限を変
   更したことがある。第二に、私が思うにファイルフォーマットの問題は人の気
   を散らす空騒ぎに過ぎない。iBooks 2 は以前通り普通の EPUB を問題なく表
   示できるし、遅かれ早かれ EPUB 3.0 標準にも対応するだろう。

<http://www.wired.com/gadgetlab/2010/09/apple-lifts-app-store-flash-ban-publishes-app-review-rules/>

   けれども第三に、Glenn と同様、私も「生徒たちは退屈しているので、ソフト
   ウェアがそれをちゃんと直してくれるだろう」という類いの「教育学的万能薬」
   的な主張を何度も聞いたことがあるし、きっと私は Glenn より頻繁にそうい
   う話を聞いていると思う。でもそれがどうしたというのだ? 昔からそうだっ
   たのだから。

   私は四半世紀よりも長きにわたり、教育機関と出版会社双方の庇護の下に、教
   育用ソフトウェア開発とインタラクティブなマルチメディア制作の真っただ中
   にいた。そのような教材の開発を私に依頼した人たちの大多数は、先週 Apple
   が iBooks Author について主張したものと同じような言い方で、何かしら魔
   術的な教育的パワーが私の作った製品の中に潜んでいると言っていたものだ。
   それは当時、現在そうであるのと同じく、実際以上に誇張したマーケティング
   のナンセンスであった。でも、マーケティングというものはそもそもそういう
   もの、実際以上に誇張したナンセンスであるのが本質なのだ。

   教えることは難しい。たった一部屋しかない学校の教室で石板を携えた生徒た
   ちに教えるのも難しかったが、近代的な、メディア豊かな教室でデジタルタブ
   レット機を携えた生徒たちに教えるのも難しい。その上、どんなツールを利用
   しようと悪い教師は悪い教師であり、手にチョークを持っていようとレーザー
   ポインタを持っていようと良い教師は良い教師だ。さまざまの背景と家庭環境
   を持ち、認知能力の発達も全く異なった若い人たちをばらばらに集めた場所で、
   効果的に働くカリキュラムを作成するのは至難の業だ。それは、カリキュラム
   の教材を伝えるためにどのようなメディアを使うかによるものではない。

   そしてそのことは、今後も変わることはない。

   でも、ここに重要な点がある。良い教育資源へのアクセスが持てるのは、生徒
   たちにとっても教師たちにとっても、アクセスがないよりは良い、ということ
   だ。iBooks Author が作成を非常に容易にするようなタイプのインタラクティ
   ブなマルチメディア教科書は、おそらく悪い教師を良い教師に変えることはな
   いだろうし、悪い生徒を卒業生総代に育てることもないだろうが、利用できる
   ということは、教師にとっても生徒にとってもずっと良いことに違いない。

   1980 年代初期以来、私が取り組んださまざまの教材プロジェクトの大多数に
   おいて、入手可能性というものが非常に大きな困難となって立ちはだかった。
   私にとっての教材テクノロジー発展に向けた探索のそもそもの初めの時代には、
   教室にコンピュータがあることは非常に稀で、デジタルテクノロジーに精通し
   た教師など皆無に近かった。その当時、教材テクノロジーのほんの小規模の実
   験プログラムでさえ、それを実施するにはボリショイ級の歌と踊りを披露して
   みせなければならなかったくらいだ。

   その後、入手可能性における最大の問題は、インタラクティブなメディアが教
   育の場で有効だと上層部を説得することよりも、むしろ必要なコンピュータ室
   を実現するための財源を見つけることへと移った。そして、最大とは言わない
   までも、忘れてならないほど費用がかかるのが、そうしたコンピュータ室で使
   用するための教材を開発できる人たちを見つけだして雇用することであった。
   開発のためのツールは使うのが難しく、しかも高価で、良いものに出会うのが
   困難であった。その上、教育とテクノロジー双方に知識を持ちそうしたツール
   を効果的に使いこなせる人材も、同程度に高価で見つけるのが難しかった。

   けれども今日では、低価格のデジタルメディアタブレットの出現によって、高
   価なコンピュータ専用室というものは終わりを告げようとしている。もちろん、
   $500 の iPad というのは決して安い買い物ではない。けれども、過ぎし日の
   コンピュータ室に固定されていたマシンに比べれば、親たちにとっても学校に
   とってもはるかに安価で、はるかに手の届きやすいところにある。ただ、それ
   と同時に、そうした新しいデバイスの上で走らせる豊かな教材を開発するため
   の費用と困難さとは、これまで劇的な低下をみることがなかった。

   それが、iBooks Author の登場で変わった。これなら、電子メールを書く能力
   のある教師ならばほとんどがマスターできるだろう。これなら、普通の本と十
   分似たものが出来上がるので、コンピュータを使った教育学に訓練を一切受け
   ていない教師でさえも理解ができ、教育の場で使う方法も分かるだろう。これ
   なら、紙に印刷した本では極めて高度な技術を備えた教師が介在してさえ困難
   であった種類の指導体験を、スムーズに伝えることができるだろう。

   いや、私も、iBooks Author がたちまち「唯一無二の特効薬」となって、世界
   中の教育の苦悩のすべてを、あるいはそのほとんどを消し去ってくれるなどと
   は期待していない。電子ブックを作成するために、唯一本物の教材開発アプリ
   ケーションになるとさえ思っていない。

   けれども私が確信するのは、iBooks Author と、それに関係した Apple によ
   る教育関連の諸構想が、入手可能性という障害物をついに取り崩すことができ
   るための、本当の機会を秘めているということだ。

   それは、良いことだと私は思う。


   ----
   コメントリンク: <http://tidbits.com/e/12739#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12739>


iBooks 教科書: 必ずしも教育の革新とは言えない
----------------------------------------------
     文: Steve McCabe <steve @ stevemccabe.net>
     原文記事: <http://tidbits.com/e/12740>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   木曜日にニューヨークで開かれた Apple の教育関係イベントには、iPhone 5
   もなければ、iPad 3 もなく、Mac Pro シリーズのアップデートもなかった。
   いや、Guggenheim において Apple が明かした革新は、完全にもっと驚くべき
   ものであった。

   「教科書というものを再定義します」と Apple の Worldwide Marketing 担当
   上席副社長 Phil Schiller は述べつつ、Apple が教育革新の推進者であると
   位置付け、新しい一連の製品シリーズを発表した。iBooks 教科書のサクラと
   なるべく囲い込まれたと見える説明したがりの教師に言わせれば、このことは
   「私の生徒たちの人生を良いものに変える」ものなのだそうだ。

   明らかにそこには、これが壮大なる前進であり、教育関係テクノロジーを推し
   進める大きな一歩であって、ものを突き崩しては革新し、人を驚かせては大喜
   びさせようという意図が見える。テクノロジーの解説者であり、1991 年以来
   教師として働いている私にとっても、これは革命的な革新のはずだ。でも実際
   には、人を大喜びさせはしなかったし、革命的な革新ではなかった。

<http://stevemccabe.net/radio.html>
<http://stevemccabe.net/mystory.html>

   確かに、Apple のような会社ならば、教科書というものを単に現状の枠組みか
   ら拡張して飾り立てるだけではない可能性を秘めているはずだ。教科書を「再
   定義」するなどという主張をするだけの自信があるのならば、そうであるべき
   だろう。何か極めて過激なものを、現在ある教科書というものに対する理解を
   覆すような何かを、導入すべきであったろう。

   けれども実際には、Apple のプレゼンテーションは Rod Serling[訳者注:
   脚本家、代表作「トワイライト・ゾーン」]の手になるべきであったかのよう
   にさえ思えた。私はこのイベントの中継を高速の、パワフルな、現代のラップ
   トップ機(クアッドコアの Intel プロセッサを備えた Apple MacBook Pro)
   で視聴し、ワイヤレス接続でインターネットに接続し、発表されたばかりの新
   製品を Apple iPad(タブレットコンピュータだ!)に同時にダウンロードし
   ていた。それなのに、それなのに... そこで誇示されていたものは、教科書を
   再定義すると大言壮語されていたものは、1990 年代半ばのものとしか思えな
   いものであった。

   iBooks 教科書は、インタラクティブになると約束されている。コンテンツが
   インタラクティブであることは、私たちが CD-ROM を使い始めた時代からずっ
   と、コンピュータを利用した伝達の根本的側面であった。私は 1995 年に、ど
   うしても CD-ROM が欲しいという理由で Mac IIsi を IIvx にアップデートし
   た。そしてすぐに、当時登場し始めていたマルチメディアのさまざまなタイト
   ルを再生し始めたものだ。そして、それらのタイトルを魅力的にしていたのは、
   シンプルな静的テキストの上に、当時の言い方でマルチメディア体験を提供す
   る、ビデオやアニメーション、オーディオといったものを構成することができ
   た点だった。

   言っておきたいが、それらはすべて、今から十七年前の話だ。つまり、今回の
   iBooks 教科書の主たる対象となる人たちが生まれた頃だ。その後の十七年間
   を通じて、コンピュータを介した教材は(「教科書」って、何と古びた言葉に
   聞こえることか)間違いなく進化したはずだ。けれども今、この 2012 年に、
   私の iPad 上に何が見えるかと言えば、(しかも、少なくとも iBooks 2 が使
   える間はという限定付きで... 私の体験ではカバがローラースケートを履いた
   より不安定に見える)これほど現代的なタブレットコンピュータの上で動いて
   いるという事実を除けば、基本的に 1990 年代初期に始まったマルチメディア
   CD-ROM で提供されていたものと大して変わらない体験に過ぎない。

<http://www.questia.com/googleScholar.qst?docId=5000286649>

   確かに、iBooks 教科書が提供する約束のレベルが、紙に印刷した本では太刀
   打ちできないのは間違いないし、プレゼンテーションの目新しさは、ことにそ
   の目新しさがコンピュータに関係している場合は、少なくとも一時的には習得
   のための感情的障害を減らす役に立つだろう。私は大学院生たちを調査して、
   これもその昔、1990 年代半ばの話だが、そのことを実証したことがある。け
   れどもその当時は、コンピュータを利用することによる可能性を追求して、テ
   クノロジーが提供する学習体験を各個人がそれぞれにパーソナル化し、今から
   十五年前でさえ利用できたいろいろのプラットフォームを使いこなしてみよう
   という気運が盛り上がり始めた時期でもあった。

   私が日本を訪れて言語教育のカンファレンスに出席したのは、たしか 1999 年
   か 2000 年のことであったと思う。私は適応型の言語能力テストのプレゼンテー
   ションを聴いた。これは、まず学生の能力を観察し、それに基づいてその次に
   行なう指導とテストの組み合わせの内容を選ぶ、というシステムだ。当時の時
   点ではその根本となる原則のまだまだ初歩的な応用に過ぎなかったが、少なく
   ともコンピュータが決断に先立つ結果に基づいて次に何をするかの決断ができ
   るということを実証していた。私の知る限り、iBooks 2 ではそのような種類
   の順応性は一切提供されていない。

   それは一つには iBooks 教科書が、基本的には iWork の Pages や Keynote
   の非嫡出子たる iBooks Author により作られるものだという事実から来る。
   今のところ、プログラミングのツールは、ごくシンプルなものでさえ存在して
   おらず、データ保存のスクリプト化さえできない。これはとても残念なことだ。
   FileMaker Pro や SuperCard といったプログラムは、さらには(神聖なる記
   憶の中の)HyperCard でさえ、一定程度の判断ベースのスクリプティングを提
   供する手段を持ち合わせていた。もしも Apple が iBooks Author にそのよう
   な要素を組み込んでいさえしたら、全く新しいレベルのインタラクティブ性と、
   パーソナル化された学習とが実現できていただろう。「Steve よ、君がシンプ
   ルで調和のとれた動きのために多大な時間を費やしたことは僕にも分かるけれ
   ど、最後の最後の関門で君の成績は良くなかったよ。ここのところでちょっと
   手助けしてあげようか?」でも、学生はコンテンツにインタラクトできるけれ
   ども、コンテンツの方は学生にインタラクトすることができず、この個所で大
   きな機会を逸していると言わざるを得ない。iBooks Author の将来のバージョ
   ンで、スクリプティングが強力な機能として注目されることを願いたい。

   現状では、iBooks 教科書はここ二十年近くの間提供されてこなかったものを
   ほとんど提供できていない。教科書を再定義するどころではない。Apple はた
   だ、既存の概念を取り上げて、それを新しい媒体に適用しただけだ。そしてそ
   れは、見たところ、iPad プラットフォーム特有の性質のため、結果的に従来
   とあまり違ったところがない。だから、ページの上に静的なテキストと静的な
   画像が載る代わりに、ページの上に静的なテキストといくつかの動く画像が載
   るようになったに過ぎない。確かに紙の教科書に比べればほんの少し進歩して
   いるが、マルチメディアによるプレゼンテーションの最先端技術を念頭に置け
   ば、スクリプティングが欠けているという現状は、時間に逆行した一歩とさえ
   言えるかもしれない。

   教育方法論の立場から言っても、進歩は見られない。1980 年に遡って Gardner
   による多重知性 (multiple intelligences) 理論から始まり、教育理論は学習
   のモーダル性を重視してきた。少なくとも、米国とニュージーランドの教員養
   成プログラムにおいては、学習者が視覚、聴覚、運動感覚、触知感覚を駆使し
   て脳の中深く叩き込むという概念を避けて通ることができない。同様に、教育
   実習においては、その教師が学生たちすべての学習スタイルにどの程度対応で
   きたかという点が必ず問われる。

   もちろん、教科書はその本性から、視覚のモーダル性に限定されている。それ
   は、紙を媒体とするものには避けられない制約だ。けれどもこの制約は、全般
   的に見て、iBooks 教科書でも何ら変わっていない。テクノロジー自体はその
   ような制約をもはや課していないというのに。iBooks 教科書の本質は、書か
   れた文章だ。それ以外のものはすべて、書かれた文章への付加物に過ぎない。

   私は物理教師なので、当然ながら McGraw Hill 社の物理の教科書サンプルを
   ダウンロードしてみた。それから波と振動の章をいろいろと試してみた。波と
   振動というのは、教室で教えるとなると決して教えやすい題材ではない。バネ
   も、ロープや波形発生器も、とかく気まぐれな動きをしがちだし、運の良い日
   に定常波を扱うのは楽しいかもしれないけれど、ロープを使って第三調和波動
   を保つのに成功した教師を私は一度たりとも見たことがない。これこそ、教師
   たちにとって iBooks 2 が最も可能性を見せるのではないかと期待できる題材
   だ。でも、これでさえも必ずしも素晴らしく実装されているとはとても言えな
   かった。そしてそれは、Apple の設定したファイルサイズの制限の結果だ。

   私たちが聞かされたところによれば、iBooks 教科書を iBookstore 経由で配
   布する場合、そのサイズは最大 2 GB まで許されるのだという。それは妥当な
   ことだろう。もちろん、Apple はこの種の本を多数販売したいと期待している
   ので、既に iTunes と、iCloud と、その上二つの App Store のサーバとなっ
   ている同社のデータセンターに、突然 15 GB の巨大ファイルの配布という重
   荷を負わせることは避けなければならない。(けれどもこの制約は、実際には
   適用されていないように見える。例えば、現在 Pearson 社から出されている
   生物学の教科書は 2.77 GB だ。)

   私としては、物理の教科書にあるすべての写真に動的な実験を示したビデオへ
   のリンクを付けたいと思う。でも、投射物のビデオやそのグラフのアニメーショ
   ンがあれば教科書への価値ある拡張と言えるけれど、そういうものを付けるこ
   とで本の制作コストが上がり、編集サイクルにかかる時間もいくぶん増えるこ
   とは避けられないだろう。私は教室で実験できないことがらをデモするために
   既に YouTube を活用していて、ロープの上に乗せたレンガが顔に当たらない
   ことを見せてエネルギー保存則を説明したりしているが、YouTube ビデオの品
   質管理には多大の時間を費やさざるを得ないでいる。iPad の上で使える出来
   合いのコンテンツがまとまっていれば、これほどありがたいことはない。同じ
   ように、平面の、二次元のホワイトボード上に Maxwell の法則を示す三次元
   ベクトルを描いてみせようとすれば、間違いなく頭を掻きむしる羽目になる。
   それを示したページを iPad 上に呼び出すだけで済めば、どんなに楽なことか。
   でも、本の中にたくさんのコンテンツを盛り込めば盛り込むほど、ファイルの
   サイズは大きくなり、ダウンロードにかかる時間も長くなる。

   そして、ダウンロードは多くの人にとって問題だ。記事“ビットに支払う:
   ニュージーランドでのインターネットアクセス”(2010 年 1 月 15 日) で私
   が説明した通り、一歩米国の外に出れば、誰もが無制限のインターネットアク
   セスを享受できる訳ではなく、それは学校とて同じことだ。仮に iPad が私の
   学生たち全員に、新学期に間に合うよう来月支給されたとしても、その後で彼
   らは自分の教科書をダウンロードしなければならない。彼らは自宅でするだろ
   うか? ニュージーランドで一般的な家庭のインターネット接続を考えれば、
   たとえブロードバンドを利用できたとしても(こちらでは今もダイヤルアップ
   がかなり広く使われている)毎月のデータ利用制限が 5 から 10 GB ほどなの
   で、結局ほとんどの学生が学校で教科書をダウンロードしようと思うだろう。
   うまく行けば学校がそれぞれの本を一冊ずつあらかじめダウンロードしておき、
   学校内で集中的な同期を走らせることができるかもしれないけれども、当然な
   がらそのためには学生たち全員がそれぞれの iPad を学校のコンピュータに繋
   いで同期しなければならない。学校のコンピュータといってもそう何台もある
   訳ではないので、頭痛の種は何重にも重なって尽きない。あるいは、うちの学
   校がこの目的のために Wi-FI ネットワークをセットアップして管理すること
   も可能だろうが、それはそれでまた別の出費だ。

<http://tidbits.com/article/10917>
   (日本語)<http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1010.html#lnk7>
   "ビットに支払う: ニュージーランドでのインターネットアクセス"

   そうしたことはすべて、学校がまだ iPad を提供していない時点で考えなけれ
   ばならない問題だ。オークランドの北にある比較的富裕層が多く通う中等学校
   Orewa College ですべての新入生に iPad または同等のものの購入を義務化し
   ようという計画を発表した際に巻き起こった大騒動を考えれば、より貧しいオー
   クランド南部にある私の学校で保護者たちに購入を要求するのはうまく行くと
   は思えない。ということはつまり、学校が自らそれらのデバイスを購入しなけ
   ればならないことになる。それはそれで困難だ。私の教える学校は、社会経済
   的十分位レートが 2 なので、他の学校が保護者たちから得ているような「自
   発的」寄付の額がほとんどゼロに近い。その結果として、文部省から支給され
   る学生一人あたり年間 $1,000 程度という学校運営予算のみに依存せざるを得
   ない。ここニュージーランドでは最も安価な iPad でも $799 するので、大量
   購入で Apple がどんなに気前良く値引きしてくれたとしても、とうてい実行
   可能な買い物になるとは思えない。

<http://www.stuff.co.nz/national/education/5859716/Orewa-College-iPad-plans-move-ahead>
<http://www.minedu.govt.nz/NZEducation/EducationPolicies/Schools/SchoolOperations/Resourcing/ResourcingHandbook/Chapter1/Appendices/Appendix1OperationalFundingRates.aspx>

   アメリカの学校においても、財政危機が一段と深刻さを増している今日、どれ
   ほど多くの学校がこのテクノロジーに出費できる余裕があるか疑問だと思う。
   私が以前教壇に立ったことのあるフロリダの Pinellas 郡では、財政危機への
   対処として教員の解雇と一時帰休によって帳尻を合わせる案が検討されている。
   去年の予算では学生一人あたりの出費が $7,845 まで許されていた。$499 の
   iPad は、この郡にいる 103,000 人の学生たち一人一人に割り当てられる財源
   の 6 パーセントにあたる。けれども、Pinellas における学生一人あたりの予
   算がニュージーランドの学校予算に比べてずっと余裕があるように見えたとし
   ても、その中から教員の給与を出さねばならないことを考えに入れれば、それ
   が学区の予算の 85 パーセントを占めるので、残るはたった $1,177、これで
   は $499 の iPad はやはり非常に大きな要求ということになり、予算削減の格
   好の標的として教員の給与が検討されているとしても、iPad だけに五百万ド
   ルも出費するのはやはり受け入れ難いだろう。

<http://www.tampabay.com/news/education/k12/pinellas-county-school-districts-budget-picture-gets-less-gloomy/1185324>
<http://jaxkidsmatter.blogspot.com/2011/05/pinellas-county-school-district-to.html>

   そういう訳で、結局のところ、これはそれだけの価値があるものか? 教科書
   を搭載した iPad を持つことで、学生たちは利益を受けるのか? 実際、それ
   は必要となる出費に見合うに十分な利益となるのか? 確かに、紙の教科書は
   高価だし、確かに、紙の教科書を購入すれば学校に五年程度の継続使用義務が
   生まれる。けれども、例えば物理においては、教えられている内容はそれほど
   急激に変化することはないので、たとえ使用による痛みのために更新が望まし
   くなったとしても、どうしても教科書を頻繁に更新しなければならないという
   ことはない。あともう一年何とかこれで間に合わせようと話し合っている私た
   ちにとって、継続使用義務があるかどうかは大して問題にならない。

   でも、iPad ならば比較手軽かつ安価にコンテンツを頻繁にアップデートでき
   るようになると言っても、はたして出版社はどれほど頻繁に無料アップデート
   を提供してくれるだろうか? 実際に iBooks 2 と iPad をフルに使いこなせ
   る程度までにその出版社が教科書のアップデート作業を済ませた頃には、本当
   にそれは無料アップデートとして提供されるようになるのだろうか? 他方、
   iPad を購入するためのハードウェアコストにしても一度きりでは済まない。
   最初の購入が済んだ後にも、サービスコストが控えている。学校は AppleCare
   を購入するのか? 保証期間外の修理が必要になればどうするのか? 特に、バッ
   テリが寿命を迎えたら? 偶発的な紛失や、損傷、盗難などに、学校保険は対
   処してくれるのか?

   仮に iBooks 2 と iBooks Author とが 1996 年にリリースされていたとした
   ら、まだ CD-ROM がかなり素敵なアイデアであった時代に登場していたとした
   ら、私はずいぶん違った記事を書いていたことだろう。けれども、今のこの時
   代に、Apple が二十年分も古びたアイデアを教科書の「再定義」などと主張し
   ているのを見れば、私は感心する気にもなれない。Schiller 君、学校が終わっ
   たら私の部屋に来なさい。君の成績: C マイナス「もっとがんばりなさい。」

   [ニュージーランドに住む Steve McCabe は、Mac コンサルタントで技術ライ
   ター、物理教師でもある。彼はニュージーランドでの冒険について語り、テク
   ノロジーを題材にしたブログを綴り、つい最近彼の個人ブログの再構築を終え
   たばかりだ。]

<http://www.mccabe.net.nz/>
<http://www.threelionstech.com/blog>
<http://www.stevemccabe.net/>


   ----
   コメントリンク: <http://tidbits.com/e/12740#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12740>


iBooks Author を出版者の観点から分析する
----------------------------------------
     文: Adam C. Engst <ace @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/e/12741>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   先週 Apple が iBooks 2 とマルチタッチの iBooks 教科書を発表し、さらに
   その iBooks 教科書を作成するために Mac 上で使う無料の iBooks Author ア
   プリを発表したことで、称賛と喝采と同時に、狼狽と批判も巻き起こった。そ
   れは、私たちとて同じことであった。

   Glenn Fleishman は Macworld に論説記事を書いて、教育における構想は概し
   て時間が経てばうまく行かなくなるものだと指摘し、iBooks 教科書もそのこ
   とを超えるものを提供しているようには見えないと述べた。ニュージーランド
   で物理教師をし時折 TidBITS に寄稿もしてくれる Steve McCabe も Glenn の
   側に立つ意見を述べ、iBooks Author は二十年前のアイデアの焼き直しに過ぎ
   ないと論じた。(2012 年 1 月 22 日の記事“iBooks 教科書: 必ずしも教育
   の革新とは言えない”参照。)他方、教育用ソフトウェアの開発やインタラク
   ティブなマルチメディア制作で働いてきた Michael Cohen は、いつの世も良
   い教育用リソースを持つことは持たないよりも良いと論じた。(2012 年 1 月
   21 日の記事“なぜ iBooks Author は大きな意味を持つか”参照。)

<http://www.macworld.com/article/164921/2012/01/apples_textbook_plan_feels_like_a_blast_from_the_past.html>
<http://tidbits.com/article/12740>
   (日本語)<http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1110.html#lnk5>
   "iBooks 教科書: 必ずしも教育の革新とは言えない"
<http://tidbits.com/article/12739>
   (日本語)<http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1110.html#lnk4>
   "なぜ iBooks Author は大きな意味を持つか"

   ここで私は状況全体の別の側面を検討してみたいと思う。それは、これらの発
   表が出版界全般にとって何を意味するかという問題だ。より良い出版用および
   読書用のツールを持ちたいと心から願っている一人の出版者の観点から、この
   問題を考えてみたい。

   iBooks Author における最も主要な問題点は、その使用許諾契約だ。ただし、
   それを見るには多少手間がかかる。iBooks Author で何かを iBooks フォーマッ
   トで作成してから、それを書き出そうとすると、ダイアログが現われて「本の
   販売は iBookstore 経由でしかできません。iBookstore 上であなたの本を出
   版するには File > Publish を選んで下さい。」というメッセージが書かれて
   いる。この文章の表現では "only" という単語の位置が悪く、Apple の意図す
   る意味に読むためには "only" を "sold" の直後に置くべきだとは思うが、そ
   れはさておきこのダイアログには iBookstore への出版に関するより詳しい説
   明へのリンクも付いている。iBooks Author のヘルプにあるその説明ページに
   は次のように書かれている:

     たとえあなたの本を iBookstore に提出しなくても、あなたがその本を書
     き出してご自分で配布することができます。

     重要: もしもあなたの本をご自分で配布することを選んだならば、必ず
     iBooks Author のソフトウェア使用許諾契約に記されたガイドラインをお
     読み下さい。契約条項を読むには iBooks Author > About iBooks Author
     を選び、License Agreement をクリックします。

   そして、あなたがようやく PDF ベースの使用許諾契約にたどり着くと、序文
   と注釈条項に次のように書かれていると気付かされる:

     重要な注意: このソフトウェアを用いてあなたが作った本あるいはその
     他の作品(以下 "Work" と呼ぶ)に対してあなたが料金を徴収する場合は、
     そのような Work の販売や配布を Apple を通じて(例えば iBookstore
     を通じて)行なわなければならず、またその配布に際しては別途 Apple
     との許諾契約に従うものとします。

     2B. あなたの Work の配布。この License の下で、またあなたがその条
     項を順守するという条件の下で、あなたの Work は以下の方法で配布する
     ことができます: (i) もしもあなたの Work が無料で(対価なしで)提
     供されるならば、あなたは利用可能などのような方法でもその Work を配
     布できます。(ii) もしもあなたの Work が料金を徴収して配布される場
     合は(購読ベースの製品またはサービスの一部として配布される場合も含
     む)その Work の配布は Apple を通じて行なわなければならず、またそ
     の配布に際しては以下の制限と条件に従うものとします: (a) あなたの
     Work の商業的配布を始めるに先立ち、あらかじめ別途 Apple(または
     Apple 関連会社または子会社)との間に書面による許諾契約を結んでおか
     なければならず、かつ (b) Apple は任意の理由で、また Apple の自由な
     裁量で、あなたの Work を配布しない決定をすることができます。

     Apple はあなたがこの Apple Software を使用した結果としてあなたが受
     けたいかなる損失、出費、損害、被害(ビジネス機会や収益が失われたこ
     とについても無制限に適用)あるいはその他の不利益に対しても責任を負
     わないものとします。

   許諾契約条項を見るためのフル手順を記し、問題の条項の文章をフルにここに
   記載したのは、要約して書くことで不正確さが生じる懸念をなくすためだ。基
   本的に、Apple はこう言っている:「あなたが iBooks Author で作ったもの
   は何でも、無料でならば好きな方法で配布できる。もしもあなたが自分で作っ
   たものを販売したいならば(あるいは購読サービスの一部とするならば)必ず
   Apple を通じて販売しなければならず、それも Apple が承認した場合に限ら
   れる。」

   このことを知って、即座に私の中で出版者としての怒りが湧き上がった。「で
   も、でも、」と私の口から言葉がほとばしった。「iBookstore でしか販売で
   きず、それも Apple が承認しないと売れないものなんて、どう見たって出版
   するわけがないぞ。第一、Apple が何を承認して何を承認しないかのガイドラ
   インすら出てないじゃないか!」

   それで、お察しの通り、大体において私の考えは今も変わっていない。私は、
   この許諾契約はこれまでコンシューマ向けソフトウェアに関して、例があった
   かどうかは知らないが、まずめったになかったことをしようとしていると思う。
   (聞いた話では、ソフトウェア開発キットでこれに似た条項を含んでいるもの
   はあるらしい。)それに、過去に iBookstore でものを販売した私の経験から
   言えば、教科書以外のものを出版する人たちが iBooks 教科書を見てビジネス
   上の大きな決断をするのは止めた方がよいと強く思う。目新しいからという理
   由で初期のタイトルのいくつかはよく売れるだろうけれど、iBookstore が過
   去に十分大きな顧客ベースを持ったことはないので、そういう人たちがこんな
   たった一つの小売業者に全財産を賭けるのはまるきり馬鹿げている。ことに、
   その小売業者があなたの本を却下する権利を持っているのだから。(念のため
   に記しておくと、確かに上向きつつあるのは事実だけれど、2011 年の Take
   Control の売上げの中で iBookstore が占めているのはおよそ 4 パーセント
   だ。確かに歓迎すべきことではあるが、私たちのビジネスモデルを大幅に変更
   する根拠となり得る数字ではない。)

   さて、iBooks Author の許諾契約に対する批判にこれ以上深入りするのは止め
   ておこう。これが良いことだと思っているからではなく、既に Dan Wineman
   が二つの記事 "The Unprecedented Audacity of the iBooks Author EULA" と
   "Common Misconceptions about What I Wrote Yesterday" で詳しく論じてく
   れているからだ。また、私が iBooks Author の許諾契約をこれ以上批判しな
   い理由のもう一つは、私たちが Apple の真意を誤解していると気付いたから
   だ。(いったんその真意が見えてもそれに同意できるとは限らないが、いずれ
   にしてもまずはそれを認識することが重要だ。)

<http://venomousporridge.com/post/16126436616/ibooks-author-eula-audacity>
<http://venomousporridge.com/post/16178567783/common-misconceptions>

   そのための鍵は、Apple がその決断の背後に潜む根拠をめったに説明しないと
   いう事実を思い起こすことにある。その例外に属するのは、主として Steve
   Jobs からのあの有名な公開書簡の数々で、それ以外のものは騒ぎが十分大き
   くなったために Apple がカーテンを取り去ることを決断した場合のみであっ
   た。だから、私たちにできるのは Apple の行動や公式発表をもとに占いをた
   ててその真意を読み取ることのみであったが、ある特定の話題について Apple
   の不行動と沈黙の中から何かを読み取ろうとするのは不可能で、今回の私たち
   はまさにそれをしようとしていたのだ。

   結局のところ実情は、先週のイベントが明確に _教育_ にターゲットを絞った
   ものであって、よりはっきりと言えば _教育市場_ に狙いを定めていたことだ。
   それは一般的に人々を _教育する_ こととは、はっきり別のものだ。私たちは
   自分たちが作る Take Control 電子ブックを _教育的_ だと見なしている。こ
   れらの本は、確かに知識と教育技術を盛り込もうとしている。けれども,私た
   ちは決して教育市場の中にいるわけではない。私たちが、そしてあまりにも多
   くの他の人たちが勘違いしたのは、iBooks Author が教科書出版社と教師たち
   以外の人たちにも向けられたものだと思ったからだ。それは、事実と違う。

   私は教科書出版の世界に詳しいわけではないが、テクノロジー本の出版の世界
   とずいぶん違うものであることくらいは知っている。ことに、私たちが本を個々
   人に、一度に一冊ずつ販売するのとは違って、米国における幼稚園から高校ま
   での教科書市場の出版社は学校ごとにまとめて本を販売する。一つの学区ごと
   にまとめて販売することさえある。また、州から財政援助を受けて、学校が州
   の予算で購入できるようにするためには、教科書の内容が承認を受けねばなら
   ない。(大学の教科書は、むしろクラス単位となるのだろうと思う。)

   だから、iBooks 教科書を読むために既にすべての生徒が iPad を必要として
   いるという状況の下においては、教科書が Apple からのみ販売されたからと
   いって教科書の出版社がそれほど困るとは思えない。(いずれにしても Apple
   の大量購入プログラムが使われることになる。)その際の大量購入に Apple
   が関与することは教科書出版社にとって得になるとさえ考えられる。なぜなら、
   生徒数を数えたりといった細かな手間に煩わされることがなくなるからだ。

<http://www.apple.com/education/volume-purchase-program/>

   教科書出版の世界に特徴的で他の種類の出版と大きく違っているもう一つの側
   面は、教科書というものが、完全にいつまでも使えるわけではないけれども、
   ひっきりなしにアップデートを必要とするものではないことだ。例えば、中学
   一年生の理科の時間に教わる内容が、科学に新たな発見があってもそれほど変
   わらないことがその理由となる。他の科目でもある程度同じようなことが言え
   るだろう。教師たちは、教科書を補うために他の資料を使うことに慣れている。
   紙に印刷された教科書は少なくとも数年間は続けて使われる必要があるので、
   内容は時間が経っても安定的なものでなければならない。その結果、教科書の
   出版社はより多くの時間と労力を投じてマルチメディアやインタラクティブな
   リソースを作成することができる。6 ヵ月から 24 ヵ月程度で痛いほど内容が
   時代遅れになってしまう分野とは事情が違うのだ。

   実際、教科書の出版社は新しいコンテンツを作り出す必要がそれほど大きくな
   いかもしれない。紙の教科書の多くは既にウェブベースの付属情報を伴ってい
   るし、私の推測では(私ならばきっとそうすると思うので)教科書出版社は新
   規の開発コストを負担するよりも可能な限りそれらのオンラインのコンテンツ
   を再利用しようとするだろう。私たちのような市場にいる出版者たちにとって
   は、マルチメディアやインタラクティブ性を開発するコストは完全に新たな出
   費であり、かなり高額なものになり得るので、$14.99 の本(から Apple の取
   り分 30 パーセントを引いたもの)でビジネスになる可能性はかなり薄弱だ。
   ことに、あまり長期間売れ続けない本ならばなおさらだ。

   では、個人個人の側から見ればどうか? 教師というのは献身的な人々なので、
   きっと教師たちは(他の人たちもだが)フェアでいてくれるだろうと私は信じ
   る。つまり、ただ単に彼らの知識を分け与えたいから、また iBooks Author
   が使って楽しいクールなツールだからというだけの理由で、きっとたくさんの
   iBooks 教科書を作り出してそれらを無料で配ってくれるだろうと思う。それ
   にはちゃんと実例がある。私が Cornell 大学の学部学生だった頃、私は教科
   書を受け取る側にいた。(とはいえ、それはギリシャ語作文の教科書だったの
   だ!)その教科書は、たった二人の学生のクラスのために Matt Neuburg が書
   いてくれたものだった。既存の教科書で、説明すべきと彼が思う方法で題材を
   扱ったものが一つもないというのがその理由だった。これはとても良いことで、
   これこそまさに Michael Cohen が iBooks Author に大きな意味があると思っ
   ている理由だ。

   けれども、現状のままでは、iBooks のプラットフォームが商業的な本を自己
   出版するための重要なツールになるとは思えない。それは、一店舗専売という
   制約が iBookstore にあるからといった理由からではない。自己出版をしよう
   という著者たちは、既存の出版会社ほど複数の販売経路にこだわったりしない
   ものだ。それよりも、iBookstore というところが、個人の著者が一冊か二冊
   の本を扱うのには向いていないという点が大きい。いくら iBooks Author が
   人々を iBookstore 経由の出版に振り向けようと、その iBookstore での作業
   が非常に分かりにくいものならば何にもならない。そして内部的に見れば、
   iBookstore 自体が、技術的ならびにビジネス上のさまざまの制約に怖じ気づ
   いた人々を Apple の認可を受けたアグリゲータ、例えば Ingram、INscribe
   Digital、LibreDigital、Lulu、また北米では Smashwords、ヨーロッパでは
   Bookwire や Immaterial といったところに目を向けさせる働きをする。

<http://www.ingramcontent.com/Apple>
<http://www.ingrooves.com/inscribe_home.php>
<http://apple.libredigital.com/signup.php>
<http://www.lulu.com/apple-ipad-publishing>
<http://www.smashwords.com/about/how_to_publish_ipad_ebooks>
<http://www.bookwire.de/apple>
<http://welcome.immateriel.eu/>

   もう一つ、Apple がこういったことすべてを教育市場に絞っている方法につい
   て注目しておくべき重要な点がある。それは、iBooks 教科書が iPad 上でし
   か表示できないことだ。技術的な制約としては、これはちょっと弱い。これら
   のファイルは、単に少しカスタマイズされた EPUB を異なるラッパーに包み直
   しただけのものだからだ。けれども、E-Ink ベースの Kindle にこれらのファ
   イルを表示できる望みが全く無いという事実はあるし、Android ベースのタブ
   レット機 (Kindle Fire も含む) には理論的にそれが可能となり得る表示およ
   び処理用のチップが装備されているとはいえ、現時点でそれを実現できるソフ
   トウェアは存在しない。Mac や、Windows ベースの PC についても現時点では
   同じことが言える。

   そういったこと全体を考え合わせれば、Apple の観点からはすべてがぴったり
   と合っていることに気付く。その筋書きとは、コンテンツの作成ができるのは
   Mac のみ、購入ができるのは iBookstore のみ、表示ができるのは iPad のみ、
   ということだ。どこに気に入らないところがあるというのだ? でも、もしも
   あなたが教科書を出版する立場でなければ、コンテンツの作成を Mac でした
   いと思わないかもしれないし、iBookstore のみでしか販売できないなんてと
   んでもないと思うだろうし、あなたの顧客が iPad オーナーのみに限られるな
   んて嫌だと思うだろう。それこそ、まさに気に入らないところだらけであり、
   私が知る Apple の人たちならば間違いなくそのことには気付いているだろう。
   彼らも馬鹿ではない。けれども繰り返して言うと、構想全体を教育市場のみに
   焦点を絞り直し得て見れば、そうした批判は大体において消え去る。さらに具
   合の良いことに、教科書市場は少数の大企業によって占められており、Apple
   はそれらの会社と個別に直接交渉ができる。Pearson、McGraw Hill、Houghton
   Mifflin Harcourt といった会社だ。

   Apple が打ち立てたこのようなやり方を、私が気に入ったなどとは決して言っ
   ていないことに注意して頂きたい。私がその代わりに望むのは、Apple がプラッ
   トフォームの独占ではなく、品質のみで競争をしてくれることだ。コンテンツ
   作成のためには iBooks Author と Mac との品質を、小売りを扱う場所として
   の iBookstore の品質を、ハードウェアプラットフォームとしての iPad の品
   質を、そして、読書のためには iBooks の品質を、考えて欲しい。Apple がそ
   のような姿勢に移行するために必要なのは、ただ iBooks Author の出力フォー
   マットを標準の EPUB 3.0 に切り替えた上で、iBooks Author の使用許諾契約
   を取り下げることだけだ。Apple は既に、十分品質で競争できることを証明し
   ている。iPod と iTunes Music Store を、iPhone や iPad と App Store を
   見ればそれが分かる。だから、Apple が今までと違った舵取りをしてプラット
   フォームの独占による競争をしようとしているのを目にすると、私は Apple
   が問題となる製品の品質に対する自信を失っているのではないかと思案せざる
   を得ないのだ。

   (多少蛇足になるが言い添えると、私は iBooks Author の出力したものがア
   プリと類似しているという議論には同意できない。プラットフォームの独占に
   繋がるかどうかという点で、iOS 特定のコードと、EPUB にほんの少し手を加
   えただけのものの間には、大きな違いがある。iOS アプリに関しては、概して
   Apple の独占は技術的理由からのものだが、iBooks に関しては概して契約上
   のものだ。)

   iBooks がオープンな出版プラットフォームとなった世界においても、出版者
   たちは依然として iPad 以外では表示できない豊かなコンテンツを作成しなけ
   ればならないという障害に直面する。(Kindle は現時点で EPUB を表示でき
   ないし、そのことは今後も変わらないだろうと私は思う。)けれども、そのコ
   ンテンツが iBookstore のみに組み込まれたり、あるいは却下されたりといっ
   た事態を恐れる必要はなくなる。

   教育市場以外の出版者たち、教科書以外の本を iBooks で作りたいと思うけれ
   ども、その本が学区で大量購入してもらえることはない、そういう人たちのこ
   とも Apple が考えていると、今は期待し続けたいと思う。Apple は過去にも
   何度か使用許諾契約を変更したことがある、中でも注目すべきは、iOS アプリ
   作成の開発ツールに関する制限を緩めたことがある。それに、iBooks Author
   を巡る文章の中には、教育市場の外をも意識したと思える個所がいくつか見受
   けられる。まず第一に、Apple のサイトの iBooks Author のページに、次の
   ような説明がある (強調部分は私が入れたものだ):

<http://www.apple.com/pr/library/2010/09/09Statement-by-Apple-on-App-Store-Review-Guidelines.html>
   (日本語 
)<http://www.apple.com/jp/pr/library/2010/09/09Statement-by-Apple-on-App-Store-Review-Guidelines.html>
   "Apple (日本) - Apple Press Info - App Store Review Guidelinesに関して"
<http://www.apple.com/ibooks-author/>

     Mac App store から無料で入手できる iBooks Author は、誰でも美しい
     マルチタッチの教科書を、_あるいは他のどんな種類の本でも_ iPad 用に
     作成できる新しいアプリです。

   それから、Mac App Store にある iBooks Author の説明には、このアプリが
   その他の私たちのためにも出版ツールとなるように思わせることがいろいろと
   書いてある:

     今や誰でも、素晴らしく魅力的な iBooks 教科書や、_料理本や、歴史書
     や、絵本や、その他_ を iPad 用に作ることができます。ただアイデアと、
     Mac があればよいだけです。幅広い種類のページレイアウトに対応したテ
     ンプレートを Apple がデザインしましたので、その中から一つ選んでそ
     こから始めましょう。あなた自身のテキストや画像を、手軽なドラッグ&
     ドロップで追加します。マルチタッチのウィジェットを使って、インタラ
     クティブなフォトギャラリー、ムービー、Keynote プレゼンテーション、
     3D オブジェクト、その他を含めましょう。あなたの本は、あなたの iPad
     の上でいつでもプレビューできます。_そうしたら、出来上がったあなた
     の作品を簡単な手順で iBookstore に投稿できます。気付かないうちに、
     あなたは出版物の著者になっているのです_。

   これが単なるマーケティングのための甘い言葉に過ぎないということも十分あ
   り得る。なぜなら、最後の部分、つまり簡単な手順で iBookstore に投稿でき
   るというところは完全に嘘っぱちだからだ。(iBooks Author の中で File >
   Publish を選んでも、あなたの本と、その表紙のグラフィックとが、新規書類
   として Apple 史上最も出来損ないのプログラム、iTunes Producer に送られ
   るだけだ。)けれども、Apple がレーザー光線のごとく教育市場のみに焦点を
   絞った現状から踏み出して、iBooks のプラットフォーム全体を広範な出版の
   世界へと開放してくれるのではないかという、いちるの望みは残る。

   そして、私が思うに、そうなることこそが、Apple も含め、すべての人たちに
   とって良いことなのではないだろうか。


   ----
   コメントリンク: <http://tidbits.com/e/12741#comments>
   Twitter リンク: <http://tidbits.com/t/12741>


TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2012 年 1 月 23 日
---------------------------------------------------------------
     文: TidBITS Staff <editors @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/e/12742>
     訳: 亀岡孝仁 <takkameoka @ kif.biglobe.ne.jp

**iTunes 10.5.3** -- iPad のための iBooks 2 での対話型の教科書の発表に合
   わせて ("Apple、学校に戻る: iBooks 2、iBooks Author と iTunes U" 19
   January 2012)、Apple は iTunes 10.5.3 をリリースした。ここでの変更は、
   iTunes と iBooks 2 を走らせている iPad 間でのこれらの新しいタイトルを同期
   する事への対応だけである。(無料、102 MB の新規ダウンロード或いは
   Software Update 経由だと 10.5 MB)

<http://tidbits.com/article/12731>
   (日本語)<http://jp.tidbits.com/TidBITS-jp-1110.html#lnk3>
   "Apple、学校に戻る: iBooks 2、iBooks Author と iTunes U"
<http://support.apple.com/kb/DL1426>
   (日本語)<http://support.apple.com/kb/DL1426?viewlocale=ja_JP>
   "iTunes 10.5.3"

   iTunes 10.5.3 へのコメントリンク:

<http://tidbits.com/article/12733#comments>


**Typinator 5** -- メジャーな新リリースで、Ergonis の Typinator 5 タイピ
   ング拡張ユーティリティが手に余るほどの新機能と共にアップデートされた、そ
   のうち最大のものはスクリプトのサポートである。テキスト拡張は今や、
   AppleScript, Perl, PHP, Python, Ruby 等々のシェルスクリプト言語で書かれた
   外部スクリプトを実行し、そしてその結果を拡張の中に含むことが出来る。他の
   新機能には、日時の計算、Quick Search フィールドでのカルキュレータ、そして
   省略形の直前にタイプされた文字を消すためのオプションが含まれる。内部拡張
   の機構も再設計され、Undo のサポートそして拡張処理の間の高速タイピングの取
   り扱いが改善された。そしてこのアップデートには安定性を増すための各種の修
   正も含まれる。(新規購入は 24.99 ユーロ、TidBITS 会員には 25% 割引あり、1
   June 2011 かそれ以降に購入されたライセンスに対しては無料アップデート、4.
   4 MB、リリースノート)

<http://www.ergonis.com/products/typinator/>
<http://tidbits.com/member_benefits.html>
<http://www.ergonis.com/products/typinator/history.html>

   Typinator 5 へのコメントリンク:

<http://tidbits.com/article/12732#comments>


**QuarkXPress 9.2** -- Quark は QuarkXPress 9.2 をリリースした。これは電
   子本の出版と iPad アップスに焦点を当てた新しい機能を搭載した無料のアップ
   デートである。EPUB エクスポートのための新しいプロジェクトを作成するのに加
   えて、EPUB 本にオーディオやビデオを付け加え、目次に含まれるべきコンテンツ
   の種類を定義し、そして出力スタイルにエクスポート設定を保持することが出来
   る。iPad 側では、このアップデートで、iPad アップスに音とビデオ要素を制御
   するための新しい Actions と iOS 5 下での Newsstand サポートが加えられた。
   (新規購入 $849、無料アップデート、1 GB、リリースノート)

<http://www.quark.com/Products/QuarkXPress/>
<http://www.quark.com/Support/Downloads/Details.aspx?fid=225>

   QuarkXPress 9.2 へのコメントリンク:

<http://tidbits.com/article/12729#comments>


**Default Folder X 4.4.8** --  最新のアップデートである St. Clair
   Software の Default Folder X 4.4.8 にコンテクストメニューが帰ってきた。全
   ての Open と Save ダイアログで使え、どんなファイルでも名前の変更、削除、
   情報を見る、そして圧縮が出来る様になる。この Open と Save ダイアログ強化
   ユーティリティのリリースで、最新版の Google Chrome とのコンパチ性、
   QuickTime Player X のサポート、ある種のフォルダを無視する機能の改善、
   Default Folder X がクラッシュしたりハングしたりする原因となっていた各種の
   バグ修正がもたらされている。(新規購入 $34.95、TidBITS 会員には $10 値引、
   無料アップデート、10.5 MB、リリースノート)

<http://www.stclairsoft.com/DefaultFolderX/>
<http://tidbits.com/member_benefits.html>
<http://www.stclairsoft.com/DefaultFolderX/release.html>

   Default Folder X 4.4.8 へのコメントリンク:

<http://tidbits.com/article/12724#comments>


ExtraBITS、2012 年 1 月 23 日
-----------------------------
     文: TidBITS Staff <editors @ tidbits.com>
     原文記事: <http://tidbits.com/e/12743>
     訳: Mark Nagata <nagata @ kurims.kyoto-u.ac.jp>

   今週 TidBITS スタッフがウェブで気付いた記事や情報の中から、最も興味深
   いものをいくつか紹介したい。


**New York Times、Apple にとっての中国の利点を解説** -- New York Times
   が、Apple (やその他の企業) が中国で製造する理由を説明した巧みな特集記
   事を出した。理由はたくさんあるが、賃金が安いという点はそれほど大きくは
   ない。訓練を受けた人々をほとんど即座に膨大な人数雇えるという点が大きな
   要因で、そのことは Apple が雇った請負業者によるその人々への待遇の良し
   悪しに関係しない。例えば、寮に寝起きして週に六日間ぶっ続けで毎日 12 時
   間働く、というのはアメリカ人には普通耐えられないが、中国やその他の新興
   国ではごくあたりまえのことだ。

<https://www.nytimes.com/2012/01/22/business/apple-america-and-a-squeezed-middle-class.html?pagewanted=all>

   コメントリンク: <http://tidbits.com/article/12738#comments>


**Apple の教科書は過去を繰り返す** -- Glenn Fleishman が Macworld の論説
   記事で、Apple の「新しい」デジタル教科書計画がマルチメディアを教育方法
   に取り入れようという、そのことで教育の成果が向上した証拠がどこにもない
   まま昔から何度も繰り返されてきた努力の繰り返しに過ぎないのではないかと
   論ずる。iPad は素晴らしいけれども、インタラクティブな教科書はそれほど
   でもない。

<http://www.macworld.com/article/164921/2012/01/apples_textbook_plan_feels_like_a_blast_from_the_past.html>

   コメントリンク: <http://tidbits.com/article/12737#comments>


**MacJury が iBooks Author の EULA を議論** -- 2012 年 1 月 19 日に Apple
   が教育関係の発表をしてからほんの数時間後、インターネットではそれを巡る
   議論が花盛りとなった。その多くは Apple の iBooks Author アプリケーショ
   ンに付属するエンドユーザー向け使用許諾契約 (EULA) のいくつかの条項に幻
   滅した、というものだ。Take Control 本の編集長 Tonya Engst や、ほか数名
   の憂慮に満ちたネット市民たちが、Chuck Joiner の司会で MacJury で議論し、
   iBooks のフォーマット自体もそうだが、この EULA がどれほど出版コミュニ
   ティーに大きな影響を与えるかと論ずる。

<http://www.macjury.com/macjury-1202-apples-education-and-ebook-publishing-announcements-examined/>

   コメントリンク: <http://tidbits.com/article/12736#comments>


**最高裁判所がパブリックドメインの定義を縮小** -- 米国最高裁判所に持ち出
   されるまで私たちは Golan 教授の訴訟など気にも留めなかったが、今回最高
   裁判所は米国政府が過去に遡って作品をパブリックドメインから除外し著作権
   の支配下に戻すことができるという判決を出した、と Techdirt が伝えている。
   政府側の主張は、諸外国にわが国の著作権を認めさせるための通商協定のため
   に必要な手続きであるとのことだが、最終的にそのことはパブリックドメイン
   を縮小させかねない(そして実際そうなる可能性が高い)という結果となる。
   私たちは皆、制作者に正当な分け前を与える著作権を支持したいと思っている
   けれども、既に死んだ人たちの作品に著作権を付け戻すことがどうして新しい
   作品を生み出す力となるのか、私たちには理解できない。

<http://www.techdirt.com/articles/20120118/09090217454/supreme-court-chooses-sopapipa-protest-day-to-give-giant-middle-finger-to-public-domain.shtml>

   コメントリンク: <http://tidbits.com/article/12728#comments>


**Wikipedia のブラックアウト、なかなか消えない穴を残す** -- New York Times
   の David Carr が、米国連邦議会で審議中の出来の悪い反海賊行為法案に抗議
   するため Wikipedia が実施したブラックアウトがインターネットにギザギザ
   の穴を残した、と巧みな説明を語る。彼も、Wikipedia に権威があると見てい
   る訳ではないが、欠かせない役割を果たしているという。つまり、何百万とい
   う話題についてそれらを理解したり調査したりする際の出発点として働いてい
   るのだ。

<http://mediadecoder.blogs.nytimes.com/2012/01/18/how-im-surviving-or-trying-to-without-wikipedia-at-my-fingertips/>



$$

TidBITS 日本語版では翻訳スタッフを募集しています。マッキントッシュや
インターネットに関する珠玉の情報をあなたの翻訳力でより輝かせましょう。
ご賛同の方は翻訳チーム <hosoka @ ca2.so-net.ne.jp> までご連絡ください。

TidBITS は、タイムリーなニュース、洞察溢れる解説、奥の深いレビューを
Macintosh とインターネット共同体にお届けする無料の週刊ニュースレターで
す。ご友人には自由にご転送ください。できれば購読をお薦めください。

非営利、非商用の出版物、Web サイトは、フルクレジットを明記すれば記事を
転載または記事へのリンクができます。それ以外の場合はお問い合わせ下さ
い。記事が正確であることの保証はありません。告示:書名、製品名および会
社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN
1090-7017

Copyright 2011 TidBITS: 再使用は Creative Commons ライセンスによります。

お問い合わせ: <editors @ tidbits.com>
TidBITS Web サイト: <http://www.tidbits.com/>
ライセンス条項: <http://www.tidbits.com/terms/>a
購読:  <http://sparky.tidbits.com/mailman/listinfo/tidbits-jp>



TidBITS-jp メーリングリストの案内